サイード大統領、7月25日の国民投票に向けて新憲法案を発表

(チュニジア)

パリ発

2022年07月11日

チュニジアのカイス・サイード大統領は630日、新憲法案に係る大統領令2022-578号を発出し、公報に掲載された。同大統領は、憲法改正の是非を問う国民投票を725日に実施すると発表していた。

ジャスミン革命後、2014年に制定された現行の憲法が国民代表議会の権限を重視するのに対し、新憲法案では「共和国の大統領は、首相(大統領が指名)が率いる政府による支援を受け、執行権を行使する」として、大統領権限を大幅に強化している。また、国民代表議会と並立して、第2の議会となる「地方議会」が設けられる。地方の声を直接反映させ、二院制とすることで、国民代表議会の権限と役割の軽減化を図るかたちとなっている。新憲法案は10142条から成る。第1章は一般規定、第2章は権利と自由、第3章は立法、第4章は行政、第5章は司法、第6章は地方自治体、第7章は独立高等選挙委員会、第8章は教育高等評議会、第9章は憲法改正、第10章は暫定規程について定めている。

これに対して、サイード大統領から新憲法の起草を依頼された「新共和国国家諮問委員会」のサドック・べライド会長は、73日付のフランス「ルモンド」紙に掲載されたインタビューで、同委員会がまとめて620日に大統領に手交した新憲法草案と630日に大統領が発表した新憲法案の間に大きな差異があることを指摘している。同氏は大統領の独走を生みかねない新憲法案を「危険」とし、二院制の中で国民代表議会の優位性がないため、国家の分裂が危惧されるとした。また、2014年憲法第1条の「チュニジアの宗教はイスラム教である」の一文が削除される一方で、新憲法案では第5条で「チュニジアはイスラム国家の一部であり、国家のみが、自己、名誉、財産、宗教、自由において、純粋なイスラムの目標達成に取り組むべきものとする」としている。同氏はこれについて、政治における宗教勢力の再強化が危惧されるとした。

(渡辺智子)

(チュニジア)

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