バイデン米大統領、粉ミルクの関税を年末まで停止する法案に署名

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月25日

米国のジョー・バイデン大統領は722日、乳幼児用粉ミルクの輸入に対する関税を20221231日まで停止する法案「粉ミルク法(H.R. 8351)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国では、新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの混乱を受けて、粉ミルクの供給不足が問題となっている。さらに、20222月には、国内生産量の約5分の1を占める医薬品・医療器具大手アボットのミシガン州工場が細菌汚染のため稼働停止となり、事態を悪化させていた。バイデン政権も供給不足に向けた取り組み外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに本腰を入れており、外国からの輸入を増やすため省庁横断の空輸プログラムや規制緩和を実施してきた。

今回成立した「粉ミルク法」は、指定された関税分類番号(注1)に該当する粉ミルク製品の輸入に対する関税を1231日まで一時的に停止する内容となる。関税停止の対象品目は、米国と自由貿易協定(FTA)などを締結しておらず、特恵関税率が適用されない場合の関税率(最恵国税率)が6.414.9%と比較的高い(注2)。2021年の対象品目の国別輸入額をみると、アイルランド(1,720万ドル)、スイス(1,280万ドル)、デンマーク(740万ドル)、日本(700万ドル)、オランダ(560万ドル)の順に多く、これら上位5カ国で全輸入額(7,900万ドル)の6割を超えている。加えて、いずれの国も米国とFTAを締結していないため、これらの国を中心に、年末まで米国への輸出が増える可能性がある。キャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表は、議会が法案を可決した721日に「(本日の可決は)乳幼児用粉ミルクの不足に対応し、サプライチェーンを強化して家庭のコストを下げるために、米国はあらゆる手段を講じるという超党派のメッセージになる」と議会の動きを評価する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出していた。

なお、米国内の粉ミルクメーカーは、原材料の輸入も関税停止の対象とするよう議会に働きかけていたが、生乳業界の反発を受け、今回の法律には盛り込まれなかったようだ。

(注1)米国のHTSコードで、1901.10.161901.10.261901.10.361901.10.441901.10.291901.10.492106.90.972106.90.99

(注2HTSコードによっては、1キロ当たり1.035ドルの従量税も加算される。各HTSコードの関税率は、国際貿易委員会のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで検索可能。

(磯部真一)

(米国)

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