米税関、「グリーン貿易戦略」発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月04日

米国税関・国境警備局(CBP)は6月30日、貿易に関わる気候変動対策をまとめた「グリーン貿易戦略」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

CBPは戦略の中で、グローバル・サプライチェーンにおける炭素排出量は世界の総排出量の80%を占めるとのHSBCおよびボストン・コンサルティング・グループ(BCG)による調査結果を引用し、国際貿易に関わるCBPが果たすべき役割を強調した。また、CBPのクリス・マグナス局長もプレスリリースで、「気候変動とそれが世界での人と物品の移動に与える影響は、米国の国家および経済の安全保障にとって新たな課題となっている」と述べ、戦略策定の意義を説明した。

CBPはグリーン貿易戦略の中で、(1)グリーン貿易の奨励、(2)関連法令の執行強化、(3)グリーン・イノベーションの加速、(4)気候変動に対する強靭(きょうじん)性と資源効率の改善、という4つの目標を掲げた。

(1)グリーン貿易の奨励では、持続可能で環境に配慮した貿易慣行を促す新たなプログラムを策定する。そうしたプログラムの参加者には、通関の迅速化などのインセンティブを付与する。CTPAT(テロ防止のための税関・貿易事業者パートナーシップ)など既存のプログラムについては、参加要件に環境に関わる基準を加えることを検討する。(2)関連法令の執行強化では、オゾン層破壊物質や違法木材、重要鉱物などの不法取引に関与する事業者を特定するため、サプライチェーンに関わる情報収集態勢を強化する。また、他国政府とも連携し、米国の環境法・規則に違反した事業者に対する罰則をより積極的に適用する。貿易協定に含まれる環境関連の条項の執行でも、外国政府と協力する。

(3)グリーン・イノベーションの加速では、サプライチェーンと政府の貿易関連業務を分析し、温暖化ガスの排出制限策を特定する。産業界が果たす役割を特定するため、民間企業の代表者などで構成されるCBPの業務に関する諮問委員会(COAC)も活用する。(4)気候変動に対する強靭性と資源効率の改善では、港湾インフラの耐久性を高めて海面上昇や異常気象に備える。また、CBPによる排出を削減するため、税関施設のエネルギー効率の改善や税関職員の勤務体制の柔軟化なども進める。

(甲斐野裕之)

(米国)

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