AMLO大統領、夏時間を廃止する法案に署名

(メキシコ)

メキシコ発

2022年07月07日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は75日の記者会見の場で、夏時間を廃止する法案に署名した。メキシコでは北西部(バハカリフォルニア州、日本との時差が本来の時間帯でマイナス17時間)、太平洋(南バハカリフォルニア州、ソノラ州、シナロア州、チワワ州、ナヤリ州、同マイナス16時間)、南東部(キンタナロー州、同マイナス14時間)、中央部(それ以外の25州、同マイナス15時間)の4つの時間帯に分かれている。1996年から夏時間が導入されており、南東部時間帯と太平洋時間帯のソノラ州を除き、4月最初の日曜日から10月最後の土曜日までは、本来の時間帯(冬時間)よりも1時間早い時間に設定される。

エネルギー省によると、夏時間導入による電力使用量の節約は2021年に537ギガワット時(GWh)、年間消費量全体の0.16%にすぎず、113,800万ペソ(約75108万円、1ペソ=約6.6円)の経費削減効果しかないとしている。他方、保健省によると、夏時間は体内時計と社会的時刻との差を生むことで健康に害を与えるとしており、眠気や、いら立ち、集中力欠如、記憶力低下、消化機能不全、日中の食欲減少と夜間の食欲増加などを招き、学習効率や労働効率を低下させ、生産性全体に悪影響を及ぼすとしている。特に夏時間に変更になった直後に、特定の職業、例えば、パイロットや教員などに与えるリスクが大きいとしている。また、成人は時間帯変更に適応するのに37日ぐらいを要するが、子供はさらに長い期間を要すると主張する(大統領府75日付記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

国境都市の扱いに注目

夏時間は以前から廃止を求める声もあり、夏時間の意義については専門家でも意見が分かれる。ただし、エネルギー省が発表した年間113,800万ペソの経費削減効果は必ずしも小さいとは言えないと指摘する声もある。メキシコ競争力研究所(IMCO)のヘスス・カリージョ持続的経済担当部長は、この金額はAMLO政権の緊縮財政下で進められた公務員の給与削減額合計を上回るだろうとしている(「レフォルマ」紙76日付)。

また、夏時間廃止は、米国経済との一体性の観点から、特に国境都市で悪影響を及ぼす懸念がある。夏時間を維持している米国側の都市との間に時差が生まれてしまうからだ。現在、米国ではメキシコより3週間早く夏時間が開始しているため、メキシコでは国境都市に限り、米国に合わせるかたちで他の都市よりも早く夏時間を適用している。議会審議を経て夏時間が廃止となった場合、国境都市をどのように扱うのかが注目される。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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