預託証券の購入制限で並行為替レートの下落に歯止め、中銀通達A7552

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年07月25日

アルゼンチン中央銀行は721日、中銀通達A7552PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公布し、法人による預託証券(Cedear)の保有額に上限を設定した。これにより、並行為替レートの下落に歯止めをかけるのが主な狙いとみられる。

Cedearは、アルゼンチン国外の企業などが発行する有価証券の預かり証券。例えば、米アマゾンやテスラの株式もCedearで購入することができる。Cedearは国内でペソで購入できるほか、通常の株式と同様に配当を受けられるなどの利点がある。裏付けが外国の有価証券のため、Cedearを購入することで手元の資金をドル化することができるというのが特に大きな利点となっている。

アルゼンチンでは昨今、国内経済の先行き不透明感が高まると同時に、ペソの金利がインフレを下回る中、Cedearの需要が高まり、その価格は上昇した。その結果、Cedearのペソ建て価格とドル建て価格から算出される優良スワップレート(CCLレート)と呼ばれる為替レートが急速に下落した。

ブルーレートと呼ばれる並行為替レートは、CCLレートを参照していると言われており、CCLレート急落はブルーレート急落につながった。ブルーレートの市場規模は小さいとされるが、国内の商取引や消費者心理に与える影響は小さくない。特に、公式為替レートとの乖離幅の拡大は将来的な公式為替レートの切り下げを想起させ、その結果として、物価上昇や輸入の前倒しや輸出の後ろ倒しにつながっている。721日には公式為替レートとブルーレートの乖離率が150%を超えた(添付資料図参照)。

現在、法人が保有することができる外貨建ての流動資産は10万ドルに制限されているが、中銀は今回の規制により、Cedearの保有額もその対象に含めるとした。さらに、今回の通達により、過去90日以内に外国為替市場にアクセスして外貨を取得した場合は、Cedearの購入ができなくなったほか、Cedearの購入から90日間は外国為替市場にアクセスすることができなくなった。

今後も政府は為替の動向を注視するとみられる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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