宇宙ベンチャーのアイスペース、早ければ11月にも米フロリダ州から月着陸船打ち上げへ

(米国、日本)

米州課

2022年07月26日

宇宙ベンチャーのアイスペース(ispace)は720日、自社開発の月着陸船について、早ければ202211月に米国フロリダ州から打ち上げると発表した。ただし、打ち上げ時期は7月時点での想定としている。

アイスペースは2010年に設立され、日本、米国、ルクセンブルクを拠点に活動し、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」を運営している。同プログラムの始まりは、月面無人探査コンテスト「Google Lunar XPRIZE」に参加した日本初のチーム「HARUTO」で、レースへの挑戦は20183月に終了したものの、月面探査の実現に向け開発を続けてきた。「HARUTO-R」は、独自に月着陸船と月面探査車を開発し、米国人実業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXのロケット「ファルコン9」を使って、2022年に月面着陸ミッション、2024年には月面探査ミッションを打ち上げることを目標としている。今回の打ち上げ計画はこの目標に沿ったもの。アイスペースは「HARUTO-R」プログラムを通じて、月の情報を取得し、地球と月の間の輸送サービスの構築を目指している。

同社は、米国航空宇宙局(NASA)が物資を月へ輸送するサービスを民間から公募したプログラム「CLPS(クリプス)」に選出され、もともと米国マサチューセッツ工科大学から分離して独立した非営利研究開発組織のドレイパー研究所のチーム一員でもある。同社の創業者兼最高経営責任者(CEO)の袴田武史氏は今回の発表について「われわれは、このミッション12022年の月面着陸)が民間宇宙開発の歴史的転換点になると信じている。当社のミッション22024年の月面探査)を含め、今後の世界の月ミッションがより信頼性の高くなるためにも、ミッション1で得られる技術データ・経験が非常に重要」とのコメントを出した。

同社は202112月時点で218億円を超える資金を調達しており、日本航空、三井住友海上火災保険、日本特殊陶業、シチズン時計、スズキなどさまざまな日本企業がコーポレートパートナーとして名を連ねている。月着陸船は20229月に全ての試験を完了した後、フロリダ州に輸送される予定。月面着陸が成功すれば、日本の民間企業初の快挙となる。

(片岡一生)

(米国、日本)

ビジネス短信 7634443f83d9524b