年金制度開始、保険料納付は10月1日から

(カンボジア)

プノンペン発

2022年07月20日

カンボジア労働省(MLVT)は75日、年金保険料の支払い開始日を101日とする省令(Prakas)を発表した(Prakas No.170/22 MLVT)。また同日、国家社会保障基金(NSSF)に対する登録や保険料の支払について詳細を定める省令も発表した(Prakas No.168/22 MLVT)。

経済財政省(MEF)と労働省は年金制度の運用開始日を71日とする共同省令(Inter-Ministerial Prakas No.165/22 MLVT)を628日に発表していたが、75日付の労働省令で支払開始日を通知したかたちだ。労働省はジェトロのインタビューに対し、保険料支払い開始日までの3カ月間は準備期間と説明(ヒアリング日:78日)。実際に、労働省は11日、経済特別区(SEZ)や工場などで7月から9月にかけて説明会を開くと発表した。

今回開始する年金制度の概要については、2019年社会保障法(Law on Social Security)に基づく20213月の政令(Subdecree)で定めている(Subdecree No.32 GNKR.BK)。主な内容は以下のとおり。

○年金制度の対象者は、労働法の規定により定義された労働者(注)(第1条、第3条)。

NSSFは年金に関する社会保障制度を管理する権限を持つ唯一の公共法人。1人以上の労働者を雇用する企業、事業所は全てNSSFへ登録の義務がある(第4条、5条)。

○年金制度への拠出は雇用主と労働者との共同負担で、保険料率は段階的に定める。

  • ステップ1:初めの5年は拠出賃金の4%(雇用主2%、労働者2%)(第8条、34条)
  • ステップ2:その後の5年間は拠出賃金の8%(第34条)
  • ステップ3:さらに10年ごとに2.75%ずつ引き上げる(第34条)

○拠出賃金とは、保険料や支給年金額の計算に使用する労働者の税引き前賃金を意味する。対象となる賃金の上限額・下限額は、別途の政令により定めるとされる(第3条、8条、18条)。これに基づき、20218月の政令(Sub-decree No.144/21)により、上限額は1,200,000リエル(約300ドル、1リエル=約0.00025ドル)、下限額は400,000リエルとされた。

○金額はリエルで計算し、NSSFが通知するカンボジア国立銀行のレートで計算する(第8条)。

○老齢年金受給条件:(1)年金制度の登録、(260歳以上、(312カ月以上の保険料を支払い(第13条)。

○障害年金受給条件:(1)年金制度の登録、(260カ月以上の保険料の支払い(第14条)。

○遺族年金受給条件:60カ月以上の保険料を支払い、老齢年金または障害年金受給資格のある者が死亡した場合(第15条)。

(注)労働法の規定により定義された労働者とは、「他の者の指揮や監督の下、対価として報酬を受けるという労働契約に署名した者」を指す。企業の従業員などが対象となる。

(秋間かをる)

(カンボジア)

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