WTO、ウクライナ侵攻によるG20の輸出制限を報告

(世界、ロシア、ウクライナ)

国際経済課

2022年07月11日

WTO77日、G20の貿易関連措置に関する第27回監視報告書(モニタリングレポート)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

WTO事務局は、ロシアによるウクライナ侵攻への対応として、財貿易において、G20のうち9カ国・地域がロシア向けに43件の貿易制裁を課したと報告した(2022515日時点)。貿易制裁には、エネルギーや金属などの分野での輸入制限や軍事転用の恐れがあるデュアルユース品目の輸出管理策、ロシアに対する最恵国待遇(MFN)の撤廃といった措置を含む(注)。

貿易制裁に加えて、ウクライナ侵攻に対しては、G20が導入した輸出制限措置14件が確認されている。これらは5カ国・地域による措置で、幅広い農産品(小麦やヒマワリ油、野菜油、砂糖など)への輸出割当制度や一時的な輸出禁止を含む。措置の対象となる貿易額は522億ドルと推計している。

一方、ウクライナ侵攻に関する輸入促進措置は、10カ国・地域による8件が特定された。農産品や燃料製品の輸入関税などの撤廃・削減を含む。対象となる貿易額は推計287億ドルに上る。5カ国・地域は、ウクライナからの輸入関税を全面的に停止している。

ンゴジ・オコンジョ=イウェアラWTO事務局長は、ウクライナ侵攻による食料安全などの人道的な危機に対する懸念を表明し、「G20が貿易制限措置の導入を抑制し、開かれた互恵的な貿易を支えるために指導力を発揮しなければならない」と述べている。

新型コロナウイルス感染症への対応では、財貿易の貿易関連措置がこれまで156件確認されている。このうち、113件は貿易促進措置、残りの43件は貿易制限措置(うち輸出制限措置が40件)に分類される。貿易制限措置43件のうち、22件は段階的に撤廃され、21件が継続している。

WTOの試算によると、2022515日時点で、G20の継続中の輸入制限は約18,020億ドル、G20の総輸入額の10.87%、世界の総輸入額の8.19%に相当する。

(注)貿易制裁には、渡航禁止や資産凍結は含まれない。

(藪恭兵)

(世界、ロシア、ウクライナ)

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