米USTR、メキシコのエネルギー政策がUSMCA違反として協議要請
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2022年07月21日
米国通商代表部(USTR)は7月20日、メキシコのエネルギー政策が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反しているとして、同協定の紛争解決手続きに基づいてメキシコ政府に協議を要請したと発表した。
米国はかねて、自国企業を優遇するメキシコのエネルギー政策を問題視しており、7月7日に開催された米・メキシコ通商閣僚会談でも懸念を表明していた。USTRは特に、次の4点についてUSMCA違反と主張している。
1. メキシコ国有企業の電力庁(CFE)が生産した電力を、そのほかの全ての民間企業が生産した電力と比べて優遇している2021年改正の電力産業法。
2. 民間企業がメキシコのエネルギー産業で事業を行うための許認可に関するメキシコ政府の不作為、遅延、却下、取り消し。
3. メキシコの自動車ディーゼル燃料基準で求められている硫黄含有量の上限値について、メキシコ石油公社(PEMEX)だけに順守期限の猶予を認めた2019年12月の規制。
4. メキシコの天然ガス輸送ネットワークの利用で、PEMEXとCFE、ならびにその製造品を優遇した2022年6月の決定。
キャサリン・タイUSTR代表は「これらの政策変更は複数の部門で米国の経済的利益に影響を与えるとともに、クリーンエネルギー供給者やそれらの購買希望者の投資意欲を減退させる」との声明を出している。米国クリーン電力協会(ACP)と米国石油協会(API)は「USMCAの義務に違反するのみならず、北米のエネルギー市場の統合を妨げ、われわれが共有する気候目標(の達成を)を危うくするメキシコのエネルギー政策に対処する上で、バイデン政権の本日の発表は重要な第一歩だ」との共同声明を出している。
USMCAの紛争解決章によると、米国の協議要請から30日以内に、両当事国は協議を開始しなければならない。もし協議要請から75日以内に協議による解決ができない場合は、米国は専門家で構成される紛争解決パネルの設置を要請することができる。
(磯部真一)
(米国、メキシコ)
ビジネス短信 46855d3af51c08ea