シンガポール、ラオスから再エネ電力輸入を開始

(シンガポール、ラオス)

シンガポール発

2022年07月04日

シンガポール・エネルギー市場監督庁(EMA)は6月23日、ラオスの水力発電所からの電力の輸入を同日から開始したと発表した。電力輸入は、政府間の「ラオス・タイ・マレーシア・シンガポール相互電力統合プロジェクト(LTMS-PIP)」に基づき、最大100メガワット(MW)の電力をタイとマレーシアを経由して輸入するというもの。シンガポールが、再生可能な発電源からの電力を輸入するのは初の試みとなる。

電力を輸入するのは、シンガポールの環境・エネルギー分野インフラ会社ケッペル・インフラストラクチャーの子会社ケッペル・エレクトリック。同社は2021年9月に、ラオス電力公社(EDL)と、LTMS-PIPの一環で、ラオスから電力を輸入する可能性を探ることで独占的フレームワーク合意書に調印。EDLは試験運用として、既存の送電網を用いて、水力発電所から最大100MWの電力をシンガポールに輸出することに合意していた。ケッペル・エレクトリックは今回、EMAから電力輸入者ライセンスを取得した初めての企業となった。

エネルギー供給の30%を電力輸入へ、エネルギー安全保障を強化

今回のラオスからの電力輸入は、EMAが2035年までに実現を目指している合計4ギガワット(GW)の低炭素の電力輸入の実現に向けた実証事業の1つでもある。シンガポールの発電燃料は、95%が天然ガスだ(2021年6月時点)。EMAはエネルギー安全保障の強化のためにも、電力輸入や太陽光発電など発電燃料の多角化を進めている。4GWの電力輸入が実現すれば、2035年に予想される電力供給の30%を占める見通しだ。

電力の本格輸入に向けた試験運用ではこのほか、シンガポールの電力会社YTLパワーセラヤが2022年中にも、マレーシア半島から既存の送電網を通じて100MWの電力輸入を計画している。また、EMAは現在、シンガポールの電力会社パシフィックライト・パワー率いるコンソーシアムと共同で、シンガポール国境近くのインドネシアのブラン島から、100MW相当の太陽光発電の電力輸入を2024年にも開始する準備を進めている。

(本田智津絵)

(シンガポール、ラオス)

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