イスラエル代表チーム、国交ないインドネシアでのU-20サッカーW杯に参加へ

(イスラエル、インドネシア)

 テルアビブ発

2022年07月05日

イスラエル現地紙「ワイネットニュース」は6月30日、イスラエルの男子サッカー19歳以下代表チームが、2023年にインドネシアで開催される予定の「FIFA U-20ワールドカップ」(20歳以下のナショナルチームによるサッカー世界選手権大会)の出場権を得た、と報じた。7月2日付のインドネシア現地紙「ジャカルタ・ポスト」も同様に、インドネシア政府とインドネシアサッカー協会(PSSI)が、イスラエルのチームがインドネシアで開催される同大会へ参加することを認めたと報じている。

イスラエルとインドネシアとの間には正式な国交がなく、「ジャカルタ・ポスト」によると、イスラム教徒が多数派を占めるインドネシアは、パレスチナ問題に関連してイスラエルを繰り返し批判してきた。また、インドネシア政府はこれまで、同国のスポーツ選手がイスラエルのスポーツ選手とともに競技に参加することを禁止するほか、インドネシアが開催する国際大会へのイスラエル選手やチームの参加を認めてこなかった。同紙は、イスラム教保守派組織「ウラマー評議会」が、インドネシア政府に対して「イスラエルのチームの参加を認めることによる、あらゆる国内の影響を考慮するように」と懸念を表明したと報じている。

イスラエルとインドネシアは正式な国交がないものの、2022年1月には、インドネシアの公衆衛生専門家からなるチームがイスラエルを訪問したと報じられた(「タイムズ・オブ・イスラエル」紙2022年1月17日)。記事によると、新型コロナウイルス感染症対策について、イスラエルの専門家から知見を得ることが目的だったとみられる。

また2022年1月には、ヤイル・ラピッド外相(当時)が、2020年9月の「アブラハム合意」によって国交正常化が実現したアラブ首長国連邦(UAE)などに続いて、時間はかかるとしながらも、サウジアラビアやインドネシアとの国交正常化も目指すと言及したと報じられている(「タイムズ・オブ・イスラエル」紙2022年1月26日)。

現状では、イスラエルとインドネシア間での正式な国交樹立に向けた見通しは確認されていないが、今回のような国際スポーツや文化面での部分的な交流の拡大が、今後の関係改善につながる可能性もある。イスラエルは、既にタイやベトナムなど東南アジア各国との政府間交流や企業活動を活発化させているが、同地域で有数の人口・経済規模を誇るインドネシアとの国交正常化はインパクトが大きいことから、今後の動きが注目される。

(吉田暢)

(イスラエル、インドネシア)

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