米民間調査、2022年世界の都市別スタートアップ・エコシステム・ランキングを発表

(米国、中国、韓国、英国、日本)

ニューヨーク発

2022年06月16日

米国調査会社スタートアップ・ゲノムと、スタートアップ企業を支援するグローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク(GEN)は6月14日、「Global Startup Ecosystem Report 2022」で世界の都市別スタートアップ・エコシステム・ランキング(注1)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回のランキングでは、前年に続き、米国のシリコンバレー、ニューヨークと英国のロンドンが上位1~3位を占めた。また、2021年に16位にランクインした韓国のソウルは今回初めて上位10位に入り、順位をさらに上げた。なお、前年では9位だった東京は、今回12位に下がった(添付資料表参照)。

前年に続き、上位10都市に米国の5都市が入った。首位のシリコンバレーは同ランキングが開始された2012年から継続して1位を維持しており、今回も6つの評価項目(注2)全てにおいて10点満点を獲得した。米国ジョイントベンチャー・シリコンバレーが発行する年次レポート「シリコンバレー・インデックス(2022年)」によると、同地域の雇用における、スタートアップ企業を主とするテクノロジー産業が占める割合は25%から29%と上昇傾向にある(注3)。スタンフォード大学をはじめとする世界トップレベルの教育機関や優秀な人材が集積していることに加えて、世界でもスタートアップに特化した有数のネットワーキング機会が設けられている点が評価されている。世界トップレベルのエコシステムとしての地位を誇り、2021年のベンチャーキャピタル投資額は1,050億ドルと前年より倍増した。次いで、2位タイのニューヨークにおいては、2021年における同地域のベンチャーキャピタル投資額は2020年の202憶ドルから550億ドル以上に達した。同市に本社を構える、RPA(注4)製品の開発・販売を手掛けるユーアイパスと、医療保険を提供するオスカーヘルスは、過去10年間で最大規模(取引額ベース)の従来型の新規株式公開(IPO)を果たしている。

アジア圏においては、中国の北京が5位と前年(4位)より順位は下がったが、上海は8位と前年の順位を維持した。北京では、半導体製造やバイオテクノロジーなどの新興企業を支援するプログラムを強化する動きが加速しており、2022年には中国・工業情報化部が約3,000社もの有望なスタートアップに対して、優遇措置を受けられる起業支援プログラムを実施する。上海については、世界的な金融ハブで、外資系企業も数多く拠点を置いており、英国調査会社ジュニパーリサーチの2022年世界におけるスマートシティ・ランキングでは首位に立ち、グローバルな影響力を持つ都市として評価されている。10位に浮上したソウルは、人工知能(AI)・ビッグデータやロボティクス、バイオテックなどさまざまな産業クラスターで革新的な技術を生み出していると評価された。2021年の韓国のスタートアップに対するベンチャーキャピタル投資額は前年比78%増の64億ドルに達し、このうちソウルは全体の56%を占め、過去最高の35億ドルを記録した。

なお、今回12位にランクインした東京については、岸田内閣が2022年を「スタートアップ創出元年」と名付け、スタートアップの形成と成長を促進するため、さまざまな規制の合理化が進んでいることが評価された。また、最近は海外のクロスオーバー投資家の参入により、成功した起業家は、エンジェル投資家などとして活動していることも大きく貢献していることも挙げられた。

(注1)世界各国にある300万社以上の企業データを分析し、300以上の主要都市の起業環境を、業績、資金調達、接続度、市場リーチ、知識、そして人材・経験の6項目(注2)で採点。

(注2)(1)スタートアップの市場価値などを示す「業績」、(2)初期段階のスタートアップの成功に重要な資金調達指標を数値化する「資金調達」、(3)地域におけるエコシステム内の関係者同士のつながりと、イノベーションを創出するための地域内の基盤を測定する「つながり(接続)度」、(4)スタートアップのビジネスモデルの成長性や海外展開を示す「市場リーチ」、(5)研究・特許活動の充実度を示す「知識」、(6)スタートアップが有能な人材にアクセスできる環境を示す「人材」と、スタートアップ企業がどれだけエグジットを行っているかなどの経験度合いを示す「経験」。

(注3)新型コロナウイルスのパンデミック時に浮上したシリコンバレー地域における技術者の流出は、同レポートの数字には反映されていない。

(注4)RPAは「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上で行う業務をロボットで自動化するソフトウエア技術のことを指す。

(樫葉さくら)

(米国、中国、韓国、英国、日本)

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