米国務省「信仰の自由に関する国際報告書」、新疆ウイグル自治区などへの懸念示す

(米国、中国、ミャンマー、ロシア、ウクライナ、アフガニスタン)

米州課

2022年06月14日

米国国務省は6月2日、世界の約200カ国・地域における信仰の自由の状況について検証と評価を行う「信仰の自由に関する国際報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2021年版)」(注)を発表した。

アントニー・ブリンケン国務長官は報告書発表の記者会見で「信仰の自由の尊重は外交政策上の優先事項であり、政府がこの権利を否定すれば、緊張に火をつけ、分裂を生み、不安定や紛争につながる可能性がある」「米国は世界中で信仰の自由のために立ち上がり続ける」と述べた。また、世界は反ユダヤ主義や反イスラム感情などの憎悪感情と闘うためにもっと努力しなければならないと強調した。ブリンケン国務長官は、世界中のコミュニティーで信仰の自由と宗教的少数派の権利が脅かされている事例として、中国政府による新疆ウイグル自治区のウイグル族、カザフ族、キルギス族、そのほかのムスリム少数民族への弾圧や、ミャンマー政府によるロヒンギャ族などムスリム少数民族への弾圧などを取り上げた。

同報告書の取りまとめを担った国務省のラシャド・フセイン大使は「不寛容と憎悪の高まりが世界中で暴力と紛争に拍車をかけている」と指摘し、具体的に、ロシアがウクライナを「非ナチ化」するとして軍事侵攻を正当化していること、また、アフガニスタンでタリバン政権が実権を掌握して以降、宗教的少数派コミュニティーに対する弾圧が強まることを事例に挙げた。

米国務省の発表に対し、中国外交部の趙立堅報道官は6月6日の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「米国の報告書とブリンケン国務長官の中国に関する発言は事実を無視し、イデオロギー的偏向に満ちており、はばかりなく中国の宗教政策を否定し、中国の内政に著しく干渉するものだ。 中国はこれを強く不満に思い、断固として反対する」と反論した。

なお、米国では、新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、同自治区が関与する産品輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」(2022年6月2日記事参照)の6月21日からの施行を控えている。

(注)信仰の自由に関する国際報告書(International Religious Freedom Report)は1998年に可決された国際宗教自由法(H.R.2431 International Religious Freedom Act of 1998)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、毎年国務省から議会に提出される。

(葛西泰介)

(米国、中国、ミャンマー、ロシア、ウクライナ、アフガニスタン)

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