EU、上場企業取締役のジェンダーバランス改善指令案に暫定合意

(EU)

ブリュッセル発

2022年06月09日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は6月7日、上場企業の取締役会におけるジェンダーバランス改善のための指令案について暫定合意に達したと発表した(EU理事会プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同指令案は2012年に欧州委員会が提案したものの、一部の加盟国がEUレベルでの法制化に難色を示したことで審議が停滞していた。2022年3月にようやくEU理事会で立場の一致がみられ、今回の合意により約10年かけて成立に向け大きく前進した。

加盟国による法制化を義務付け、現行の女性取締役比率3割から底上げを図る

指令案では、(1)上場企業に2026年6月30日までに、取締役会の構成員のうち、非業務執行取締役(non-executive board directors)に占める少数ジェンダー(すなわち、ほとんどの場合女性)の比率を少なくとも40%、あるいは、(2)全取締役に占める同比率を少なくとも33%とするよう求める。加盟国は、指令の発効から2年以内に、(1)または(2)を確保するための法令を採択しなければならない。指令に従い国内法が定めるいずれかの比率に満たない上場企業は、未達成の理由および改善のための取り組みについて報告を求められる上、新たな取締役の選任に当たり同等の男女の有資格者がいる場合、少数ジェンダーの候補者を選出しなくてはならない。加盟国は、報告義務や少数ジェンダーからの取締役選出義務に従わない企業に対し、効果的な罰則を設けなければならず、罰則の例として指令案では罰金や選出の無効化が挙げられている。従業員数250人未満などの中小企業は指令の対象からは除外される。

EU機関のデータによれば、2021年10月時点でEUにおける女性取締役の比率は、加盟国の平均で30.6%だが、最も高いフランス(45.3%)から最も低いキプロス(8.5%)まで差が大きい。現状では、東欧諸国を中心に9加盟国では取締役のジェンダーバランスに関する国内法令が存在しないため、指令の発効により比率の底上げが期待されている。指令案は今後、EU理事会および欧州議会がそれぞれ正式に採択した上で、EU官報掲載から20日間後に発効する。加盟国は発効後2年以内に国内法令を採択し、指令に基づく義務を実施する必要がある。

(安田啓)

(EU)

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