上海の操業再開による輸送量の増加、世界の海上輸送に影響との見方も

(中国)

上海発

2022年06月02日

上海市では、新型コロナウイルスの新規感染者数は減少傾向にあり、経済活動の正常化が進みつつある。同時に、物流面への影響が懸念されている。

ドイツの国際物流企業DHLのティム・シャーワット最高経営責任者(CEO)は「新型コロナウイルス感染拡大による数週間の封鎖管理を経て、上海の経済活動は再開するが、これはサプライチェーンに『波』を引き起こす可能性がある」と述べた。具体的な影響について、シャーワットCEOは「上海では多くの積み残しコンテナ(バックログ)がある一方、上海港周辺の輸送力は十分とはいえず、(上海の経済活動再開に伴って)輸送量の急増が懸念されている。(海運)市場への大きな圧力を避けるためにも、上海の経済活動再開は相対的に緩やかに行われることが望ましい。(一挙に再開されると)サプライチェーンのもう一端にも影響を与える可能性がある。(上海の)全面的な操業再開は欧州と米国の港湾にも影響を与えるだろう」と指摘した(「テンセント網」5月25日)。

加えて、シャーワットCEOは、航空・海上運賃が2019年の水準に戻ることはなく、運賃は今後も上昇を続け、海運の輸送力が緩和されるのは2023年の春節(旧正月)以降になるとの見通しも示した。(「澎湃新聞」5月25日)

新型コロナウイルス感染拡大や世界的なコンテナ不足などにより、コンテナ輸送運賃は高止まりしている。中国から北米への輸出に際してのコンテナ運賃(20フィートと40フィートコンテナ)は2020年5月以降上昇し、2021年8月をピークに下落したものの、2022年4月時点の運賃は2020年5月に比べ4倍を超えて高止まりしている。貨物量も2020年8月以降、前年同月比で2桁以上の大幅な伸びをみせ、2021年7月以降は減少に転じたものの、引き続き高い水準にある(添付資料図参照)。

上海の操業再開に伴い、中国内の製造業のサプライチェーンが回復し、これまでの生産の遅れを挽回するべく工場が稼働率を上げれば、貨物量も増加することが見込まれる。上海の経済活動再開が海上運賃のさらなる上昇や輸送の逼迫につながる可能性もある。

(高橋大輔)

(中国)

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