アクセラレーターがデモデー開催、NATOはデュアルユース技術の育成に期待

(ルーマニア)

ブカレスト発

2022年06月23日

ルーマニア・ブカレストのスタートアップ・アクセラレーター、イノベックスBCR(InnovX-BCR外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は6月15日、ベンチャーキャピタルや大手ソフトウエア企業、経済紙記者、アルムナイ(卒業生、同窓生)などを招待し、デモデー(注1)を開催した。イノベックスBCRは2019年に設立され、国内大手銀行のBCR(Banca Comercială Română、ルーマニア商業銀行)が運営資金を拠出している。これまでに110社のスタートアップを支援対象として採択し、このうち26社がスケールアップ企業(注2)になったとしている。

来賓あいさつではNATOのミルチャ・ジョアナ事務次長がオンラインで登壇し、NATOサイバー防衛協力センター(NATO Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence、CCDCOE)では、ルーマニアが重要な役割を果たしており、これを受けてEUが2021年、首都ブカレストにEUのサイバーセキュリティ産業技術研究能力センター(European Cybersecurity Industrial, Technology and Research Competence Centre)の本部を設置したことを紹介した。また、NATO加盟諸国が2021年のNATOサミットでNATO防衛技術革新アクセラレーター、通称ダイアナ(Defence Innovation Accelerator for the North Atlantic、DIANA)を立ち上げ、デュアルユース技術(注3)を開発しているスタートアップ育成のため、10億ユーロのベンチャーキャピタル基金の設立を決定したことに言及し、イノベックスBCRのもとでスケールアップを図るスタートアップに期待していると述べた。

デモデーのピッチセッションでは、スタートアップが9社登壇し、光通信の改良機器、組み込みシステムに特化したLinuxオペレーティングシステム開発、金融機関が中小企業に求める信用情報を即時に提供する技術、顧客のリアルなショッピングと通販を結びつけるブランディングSaaS(注4)、小規模事業者の外の現場社員と本社との結びつきを簡単に強めるERP(基幹系情報システム)のSaaS、法律相談マッチングプラットフォーム、放射線医療現場の自動画像診断システム、仮想現実の3Dコンテンツを簡単に創作できるツール、量子コンピュータ開発向けのビジュアルユーザーインターフェースなどさまざまな分野の技術を披露した。

写真 デモデーでのピッチセッションの様子(ジェトロ撮影)

デモデーでのピッチセッションの様子(ジェトロ撮影)

(注1)アクセラレーターが採択したスタートアップのプログラム成果発表会。

(注2)売上高や従業員数が急成長している企業。

(注3)商用に焦点を当てているが、防衛や安全保障にも応用できる技術。

(注4)ソフトウエア開発者が製品をクラウドサーバー上で提供し、ユーザーがインターネット経由で利用できるサービス。

(西澤成世)

(ルーマニア)

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