ステランティス、環境負荷少ないリチウムを米カリフォルニア州で確保、EVバッテリーのサプライチェーン強化

(米国、オランダ)

シカゴ発

2022年06月10日

ステランティス(本社:オランダ・アムステルダム)は6月2日、北米向け電気自動車(EV)生産で使用するバッテリー用の水酸化リチウムの供給に関するオフテーク契約(注)をカリフォルニア州のコントロールド・サーマル・リソーシズ(Controlled Thermal Resources、CTR)と締結したと発表した。ステランティスはCTRとの10年間の契約期間中、年間最大2万5,000トンの水酸化リチウムの供給を受ける予定だ。

CTRは地熱発電事業に取り組んでおり、この再生可能エネルギーと蒸気を利用して地熱かん水に含まれるリチウムを回収する。同社のリチウム生産は、通常行われる広大な土地での採掘や化石燃料を使用する処理がないことから、従来のリチウム生産よりも環境負荷が少ないといわれている。この方法で生産されたリチウムを使用することにより、ステランティスは脱炭素化した主要原料を用いたサプライチェーンを強化できることになる。

ステランティスのカルロス・タバレス最高経営責任者(CEO)は「EV生産のサプライチェーンを強化することは、当社の大胆なEV化計画の支援のために不可欠だ」とした上で、「競争力のある低排出のリチウムの確実な供給を世界中のさまざまパートナーから受けることで、当社のアグレッシブなEV生産計画を達成することができる」と述べた。

また、CTRのロッド・コルウェルCEOは「ステランティスとのオフテーク契約締結は、米国の自動車産業にとって新しいベンチマークとなる」とし、「再生可能エネルギーによって生産されたクリーンなリチウムを確保することは、バッテリーサプライチェーンの脱炭素化につながり、ひいては環境負荷の少ないクリーンな自動車を実現することになる」と総括した。CTRは2021年7月にも米ゼネラルモーターズ(GM)との間で戦略的投資とリチウム供給に関する契約を締結している。

大手自動車メーカー各社がEV生産に取り組み始めたことから、地中から抽出される炭酸リチウムの価格は大幅に上昇しており、4月時点では1トン当たり6万2,000ドルを記録、前年同月から432%上昇している(「タイム」誌5月26日)。

(注)主に鉱業や原油、電力などの取引で、購入者が決められた量の事業製品を長期にわたって購入することを決めた契約。

(星野香織)

(米国、オランダ)

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