政府が後払い決済に関する金融規制の強化計画を発表

(英国)

ロンドン発

2022年06月29日

英国政府は6月20日、急成長するデジタル後払い決済サービス「バイナウ・ペイレーター(BNPL)」に関する規制を強化することを決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。BNPLは決済方法の1つで、クレジットカードを持たない若い世代を中心に普及している。特徴は分割払いに伴う利息や手数料の支払い負担がないことだ。しかし、現時点では利用者がこのサービスを簡単な与信審査で利用できることや、クレジットカードと異なってサービス事業者が信用審査機関を通じて利用者情報を共有できないことから、消費者が過剰債務を抱えるリスクがある(コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーが2021年10月に発表した報告書)。

英国政府はBNPLについて、現状はリスクから利用者が十分保護されていない状況と指摘した。

同日の政府計画の発表によると、ローン提供事業者に対し、利用者(借り手)の支払い能力の確認に加えて、ローンが利用者の支払い能力に見合うかを確認することが義務付けられる見通しだ。さらに、BNPLの広告が公正、透明であり、利用者に誤解を招かないものとなるよう、金融広告規制を改正する考えも示した。そのほか、ローン提供事業者に対し金融行為規制機構(FCA)による認可取得の義務付けや、英国の金融オンブズマンサービス(FOS)を通じた利用者の苦情申し立てを可能にすることなどが検討されている。

政府は規制の複雑性も踏まえ、2022年中にBNPLセクター規制に関する法案に関する意見公募を実施する予定だ。これに続き、政府は2023年半ばまでに法案を提出することを目標としている。

米国メディアのビジネスワイヤ(2021年7月13日付)によると、英国内のBNPL市場は新型コロナウイルス禍で急速に拡大し、2021年のBNPLサービスでの支払額は前年比41.8%増の82億6,500万ドルに上る見込み。また、英比較サイトのファインダーの調査(2021年3月1日付)では、ミレニアル世代(1981年から1996年までに生まれた層)とZ世代(1996年以降に生まれた層)のそれぞれ約5割が利用しているとしている。

英国でBNPLサービスを提供する企業としては、スウェーデンのクラルナ、オーストラリアのアフターペイなどが挙げられる。また、ブルームバーグ(6月24日付)は、英国のオンラインバンキング企業レボリュートがアイルランドでBNPLサービスに参入する計画と報じた。

(今井丈生、山田恭之)

(英国)

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