米フォード、中西部3州で37億ドルの投資計画を発表、雇用拡大とEV増産に

(米国)

シカゴ発

2022年06月10日

米国自動車大手のフォード(本社:ミシガン州ディアボーン)と全米自動車労働組合(UAW)は6月2日、米国中西部のミシガン州、オハイオ州、ミズーリ州の3州で総額37億ドルの投資を行い、約6,200人を新たに雇用すると発表した。スケジュールを前倒して臨時雇用者3,000人をフルタイムの正規雇用者に転換させるとともに、今後5年間で10億ドルを投資して従業員に対する福利厚生の拡充など雇用環境の改善を行う。併せて、2026年末までに世界全体で年間200万台の電気自動車(EV)の生産体制の確立を目指すという。

同社のビル・フォード会長は、「当社は米自動車業界で時間給労働者を最も多く雇用しており、今回の投資は新型マスタングから新型EVに至るまで、素晴らしい新車をここ米国でUAWと協力して製造するというわれわれのコミットメントを深めるものだ」と述べた。その上で、「当社が中西部に投資し、工場で働く従業員に対してより良い福利厚生と労働環境を提供するために実際に行動していることを誇りに思う」と締めくくった。また、UAWのレイ・カリー会長は「今回の発表は、フォードの成功のために技術や経験、知識を提供し、貢献する組合員への証である」と述べた。さらに、「われわれは常に雇用主や議員に対して、組合に加入する労働者への投資がいかに重要であるか訴えかけてきた。フォードはこれらの労働者の仕事を増やし、3,000人の臨時雇用者を正規雇用者に切り替えることに踏み切った」と同社の発表を高く評価した。

中西部3州それぞれへの投資額と新規雇用者数の内訳は次のとおり。

  1. ミシガン州:州内3工場に20億ドルを投資し、3,200人を雇用。リュージュ工場ではEVピックアップトラック「F-150 ライトニング」の年間生産台数を15万台に引き上げ。ウェイン工場では新型ピックアップトラックの「レンジャー」を生産、フラットロック工場では新型「マスタング・クーペ」を生産。さらに、顧客に対する部品供給の迅速化に向けてカスタマー・サービス関連施設を建設。
  2. オハイオ州:オハイオ工場で商用EVの生産を2020年代半ばに開始するために15億ドルを投資し、1,890人を雇用。また、リマのエンジン工場とシャロンビルのトランスミッション工場に1億ドルを投資し、90人を雇用。
  3. ミズーリ州:カンザスシティ工場に9,500万ドルを投資し、1,100人を雇用。商用バン「トランジット」とそのEVモデル「E-Transit」の生産を拡張。

フォードのEV増産、実現へ

フォードは2022年4月、前年に全米で最大の販売台数を記録したピックアップトラック「Fシリーズ」のEVモデル「F-150 ライトニング」の生産を開始した。同社は同車種への需要の高まりから、2023年末までに生産能力を年間15万台まで増加させる計画を発表しており、今回の投資はその実現に向けた一歩となる。

同社の今回の発表に際し、ミシガン州のグレッチェン・ウイットマー知事(民主党)は「フォードが20億ドルを投資して3,200人の組合員の雇用を創出し、ミシガン州の長い伝統を前進させることに感激している」と述べた。さらに、「今回の発表により、私が知事に就任して以来、ミシガン州では約2万5,000人の自動車関連の雇用が創出された。われわれはモビリティと電動化の未来をリードし続けている。今後もこの協力の精神で経済を成長させ、雇用を創出し、未来を前進させよう」と意気込みを語った。

(齋藤秀美、星野香織)

(米国)

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