雇用は好調に推移、引き続き多くの分野で供給不足やコスト上昇、米シカゴ連銀ベージュブック

(米国)

シカゴ発

2022年06月08日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が6月1日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)(注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、4~5月初旬にかけての同地域における経済活動については、緩やかに(modestly)向上したが、今後数カ月間は成長ペースが鈍化すると予測した。労働力と原材料の供給制約が、引き続き景気拡大の重荷となっているとした。

同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は好調に推移し(increased at a strong pace)、今後12カ月間は緩やかな成長が見込まれる。各業界の関係者からは、業種や技能を問わず労働者の確保が引き続き困難であるとの報告があり、多くの企業が人材不足によって思うように稼働ができていないことを指摘した。全体として、賃金と福利厚生のコストは、新規雇用と人材維持のための両方によって急速に増加した。

個人消費は控えめに(modestly)増加した。消費者の購買行動は、し好品から必需品へとシフトしていることが報告された。また、地域のフードバンクからは、需要が大幅に増加したとの報告があった。商品別では、食料品がやや増加したものの、家具や住宅関連への支出は減少した。観光・サービス業は、業態によって差があるものの、今後の予約状況からは、夏の旅行需要は旺盛であることが予測される。自動車の販売台数は横ばいで、依然として低い在庫水準が要因となっている。

企業支出はわずかに(slightly)増加した。小売在庫は全体的にやや増加したが、サプライチェーンの停滞が続き、引き続き多くのセクターで低水準にとどまっている。製造業の在庫は、全体としては余裕がでてきたが、幅広い投入資材の不足が続いている。製造業や小売業の関係者は、中国での新型コロナウイルスの感染者増加がさらなる供給の混乱を引き起こすことに懸念を示した。

製造業の活動は、サプライチェーンの逼迫と労働力不足という課題を抱えながらも、4~5月初旬にかけて緩やかに(moderately)増加した。自動車は、引き続きマイクロチップや部品が不足したが、生産台数は増加した。

農業分野に関しては、トウモロコシ、大豆、小麦の価格は全て上昇し、ディーゼルやプロパンの価格も上昇した。

個々の調査対象項目ごとのポイントは添付資料参照。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。

(星野香織)

(米国)

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