スリランカ経済、混迷の度合い増す

(スリランカ)

アジア大洋州課

2022年06月29日

経済危機下にあるスリランカでは、通貨ルピー安が加速してきた。6月27日時点で1ドル359.0スリランカ・ルピーと、歴史的な安値水準にある。新型コロナウイルスの拡大が世界的に本格化する前の2020年初頭と6月27日の値を比較すると、49.5%の下落率だ。この落ち込みは、主要なアジア大洋州の通貨の中では下落率として最大となっている。例えば、6月22日に24年ぶりの円安を記録した円の対ドル下落率は同じ期間に19.6%。円安傾向にある日本円との比較でも、スリランカ・ルピーの弱さが際立つ。ただし、5月初旬の最安値からは3.1%買い戻された水準にあり、足元では大幅な売りは止まっている(添付資料図参照)。

為替レートの大幅安は、外国人投資家がスリランカの債務支払い能力に疑念を抱いていることにある。支払いの原資となる5月末の外貨準備高は18億ドルと、極めて低い水準だ。しかし、4月の16億ドルからはわずかながらも増加に転じた。現地紙は、この増加は政府による規制・統制による結果であって、国民が海外から輸入品を容易に入手できるためには、少なくともさらに60億ドルの外貨が必要としている(「デーリー・ミラー」紙6月9日)。外貨準備の減少によって、政府は国民生活に不可欠な食料や燃料、医薬品の輸入代金の支払いが難しくなっている。

供給量の低下や世界的な資源価格の高騰に加えて、為替の大幅安は輸入物価の上昇を通じて、インフレを深刻化させている。5月のインフレ率は45.3%となり、アルコールを除く食料品の価格は、2020年1月比では、1.7倍に上昇している。ラニル・ウィクラマシンハ首相がスリランカ経済は「完全に崩壊」と発言する中、IMFとの融資協議に向けた話し合いも行われている(ブルームバーグ6月23日)。22日のロイターは、首相が中国やインド、日本の参加を視野に入れた援助国会議を開催し、8月には暫定予算の提示を表明すると報道した。

(新田浩之)

(スリランカ)

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