バイデン米政権、台湾との新たな貿易イニシアチブを立ち上げ

(米国、台湾)

ニューヨーク発

2022年06月02日

米国通商代表部(USTR)は6月1日、台湾との間で「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」を立ち上げたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同イニシアチブの初会合は、米国在台湾協会(AIT)と駐米国台北経済文化代表処(TECRO)による主催の下、6月後半にワシントンDCで開催され、次の11分野での合意に向けた交渉ロードマップを作成するとしている。(1)貿易円滑化、(2)規制慣行、(3)農業、(4)反腐敗、(5)中小企業の支援、(6)デジタル貿易のメリットの活用、(7)労働者中心の貿易促進、(8)環境と気候問題対策の支援、(9)規格・基準、(10)国有企業、(11)非市場的政策・慣行。

米国と台湾はインド太平洋地域に含まれ、同地域における多国間の経済枠組みとしては、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)とインド太平洋経済枠組み(IPEF)が存在する。しかし、CPTPPには、台湾が2021年9月に加入申請を行った一方(2021年9月27日記事参照)、米国は復帰する意向がない。IPEFについては、米議会内にも台湾の参加を希望する声があったが、米国は中国からの反発を意識して、台湾を含まないかたちで発足させた(2022年5月24日記事参照)。今回の米台イニシアチブは、双方が共にメンバーとなる多国間枠組みの実現が困難な中で立ち上げられた。交渉で扱う分野も、IPEFの4本柱(注)におおむね沿うものとなっている。

また、政権高官が記者向けに明かしたところによると、米台イニシアチブは市場アクセスを含まない予定で、この点もIPEFと同様だ(ポリティコ6月1日)。元USTR次席代表補でアジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)副所長のウェンディ・カトラー氏は自身のツイッターで、「台湾が輸入に課している平均関税率が工業品で4%、農産品で9%である中、関税が(交渉から)除外されたのは米国の輸出者には損失だ」とした。また、同イニシアチブが台湾のIPEF不参加の代わりとなるかについては「時がたてば分かるだろう」と述べている。他方、台湾をIPEFに含むよう政権に要請していたボブ・メネンデス上院外交委員長(民主、ニュージャージー州)は「タイUSTR代表が台湾への経済関与を優先事項としていることを喜ばしく思う」と評価する声明を出している(2022年5月19日記事参照)。

(注)(1)公平で強靭(きょうじん)性のある貿易、(2)サプライチェーンの強靭性、(3)インフラ、脱炭素化、クリーンエネルギー、(4)税、反腐敗。

(磯部真一)

(米国、台湾)

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