米ボーイング、グローバル本社を移転、シカゴからワシントンDC近郊へ

(米国)

シカゴ発

2022年05月09日

米国ボーイングは5月5日、グローバル本社を現在のイリノイ州のシカゴからワシントンDC郊外のバージニア州アーリントンに移転すると発表した。

ボーイングは、移転先となるバージニア州北部のアーリントン地域に関して、同地域に集積する航空宇宙・防衛関連企業に従事する人材の質を高く評価、「本社機能を支えているほか、先進的な航空機の開発と自律型システムに特化している」としている。同社は、新たなグローバル本社に研究・技術開発拠点を設置し、エンジニアリングや技術の活用・誘致を行うことを計画している。

同社のデイブ・カルホーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「(アーリントンは)当社の顧客や関係先に近く、世界クラスのエンジニアリングや技術的な能力を有する人材へのアクセスの良さを考えると、当社のグローバル本社を置くことは戦略的に理にかなっている」と述べた。

今回の本社移転により、防衛事業の重要な顧客で、最大の事業部門の民間航空機部門の監督官庁でもある連邦政府への物理的なアクセスが容易となる。特にボーイング「737マックス」の飛行トラブルなどを受けて、連邦政府との関係はより重要なものとなっている、と指摘する声もある。

シカゴ市のプレゼンスの低下を懸念する声も

イリノイ州およびシカゴ市は2001年、同社に対して5,100万ドル規模の税制優遇措置とインセンティブを提案し、同社を誘致した経緯がある。カルホーン社長兼CEOは「イリノイ州とシカゴ市に大変感謝している。引き続き、強力なプレゼンスを維持していきたい」と述べた。

同社によると、本社移転による従業員の解雇や配置転換は予定しておらず、今後も400人以上を雇用する予定としているが、コロナ禍を契機とした、従業員の働き方の柔軟化により、同社はシカゴ市に保有するオフィススペースを縮小させており、シカゴ市のプレゼンスの低下を懸念する声も聞かれる。シカゴ市のロリ・ライトフット市長(民主党)は「シカゴ市への企業の移転は続いている」とし、「ボーイングの移転は決定したが、シカゴ市がグローバル企業の主要な拠点であることに変わりない」と述べた。

(藤本富士王)

(米国)

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