カナダの大手鉱業会社、ザンビア鉱山に13億5,000万ドルの投資を決定

(ザンビア、カナダ)

ヨハネスブルク発

2022年05月20日

カナダのファースト・クォンタム・ミネラルズ(FQM)の取締役会は5月8日、ザンビアの北西部に所有するカンサンシ鉱山S3拡張計画への12億5,000万ドル(9億ドルが工場設備と採鉱用の車両手配、3億5,000万ドルが拡張エリアの準備作業に充てられる予定)の融資を承認した。同計画の初期建設工事は既に完了している。なお、エンタープライズ・ニッケル・プロジェクトへの1億ドルの融資も決定し、合計で13億5,000万ドルの大規模投資となる。

FQMが80%、ザンビア国有企業ZCCM-IHが20%の権益を持つ同鉱山は、FQMが保有するセンチネル鉱山とあわせてザンビアの銅の約半分を生産している。しかし、鉱石の金属含有量低下により2021年の生産量は前年比8.6%減の20万2,000トンに減少していた。拡張工事完了後、年平均銅生産量は25万トンになる見込みで、鉱山寿命は2044年だ。なお、エンタープライズ・ニッケル・プロジェクトにおいては、今回の投資で2023年から年間5,000~1万トンのニッケル生産を見込む。

FQMのトリスタン・パスカル最高経営責任者(CEO)は、「今回のプロジェクトの承認は、ザンビアの投資環境に対する信頼度が高まったことを反映した結果だ」と述べ、2021年8月のハカインデ・ヒチレマ政権誕生後、ザンビアの投資環境が改善されたとした。さらに、FQMは、ザンビア政府との間で争点となっていた付加価値税の還付遅延問題などが解決したことも評価した。エドガー・ルング前大統領は外資鉱山企業との関係を悪化させていたが、新政権は今年1月から法人税へのロイヤルティー控除制度を再導入し、鉱業税制がより予測可能になるよう改革を進めている。また、ザンビア鉱山商工会議所はFQMを「ザンビアにおけるゲームチェンジャー」と評し、今回の動きを歓迎した。

銅価格は2022年3月から4月にかけて1トン当たり1万ドル台を維持していたが、5月12日のロンドン金属取引所では、2021年10月以来初めて9,000ドルを割った。政府の財政への影響が心配される中、今回の新規投資がザンビア経済にとって追い風となることが期待されており、同国内でも大々的に報道されている。

(堀内千浪)

(ザンビア、カナダ)

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