カーボンクレジット、2021年は前年比5割増、世界銀行がレポート

(世界)

国際経済課

2022年05月25日

世界銀行は5月24日、レポート「カーボンプライシングの現状と傾向 2022年外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。世界で4月時点で導入されているカーボンプライシングの政策(注1)は2021年から4つ増え、68〔炭素税が37、排出量取引制度(ETS)が34、一部重複あり〕だった。これらの政策は世界で排出される温室効果ガス(GHG)全体の約23%をカバーしている。カナダ・オンタリオ州のETS導入(2022年1月)などにより、カバー率は前年から約0.2%増加した。

ETSでの取引価格は、特に先進国で2021年後半に記録的に上昇した。ロシアがウクライナに侵攻した2月以降の取引価格は少し下落している。炭素税は2021年に前年から平均で二酸化炭素(CO2)換算1トン当たり6ドル程度上昇したが、2022年はさらに同5ドル上昇した。例えば、スイスの炭素税は2021年の1トン当たり96スイス・フラン(約100ドル、Sフラン、1Sフラン=約1.04ドル)から120フランに上昇している。

炭素税とETSによる導入国・地域政府の収入(2021年)は前年比6割増の約840億ドルとなった。2020年までは炭素税の収入がETSの収入を上回っていたが、2021年はETSが収入全体の67%を占め、初めて炭素税を上回った。取引価格の上昇と無償割り当て枠の削減が背景にあり、EU排出量取引制度(EU-ETS)は収入全体の41%、2021年から導入したドイツと英国のETSは2カ国合わせて同16%を占め、欧州のETS収入だけで世界の収入全体の6割に達する。

世界のカーボンクレジット発行残高は前年比48%増の4億7,800万トン。発行主体別でみると、NGOなどの民間事業者が前年比88%増の3億5,200万トンで全体の74%を占める。国・地域による発行は全体の15%、国際機関は同11%だった。

ボランタリークレジット市場は脱炭素化の目標設定を行う企業の増加により、発表時点で14億ドルに達した(注2)。2021年の平均価格は1トン当たり3.82ドルで、前年(2.49ドル)から上昇、取引量は前年比92%増の3億6,200万トン超となり、価格と量の増加が市場規模拡大につながっている。

(注1)二酸化炭素(CO2)排出に対する価格付けを行うことで、排出側での排出抑制を促す。そのうち、カーボンプライシングの政策には炭素税と、排出量取引制度がある。

(注2)2021年11月時点で10億ドルを超えていた。

(古川祐)

(世界)

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