議会選で中道左派の新党「自由運動党」が圧勝

(スロベニア)

ウィーン発

2022年05月09日

スロベニアで4月24日に行われた議会選挙(定数90)で、中道左派の新党「自由運動党」(GS)が得票率34.50%(41議席)と大勝し、第1党になった(添付資料表参照)。ヤネス・ヤンシャ首相率いる中道右派のスロベニア民主党(SDS)は23.52%(27議席)を獲得したが、従来の連立パートナーのうち、新スロベニア(NSi)(6.87%、8議席)以外は議席を逃した。マリヤン・シャレツ元首相が設立したマリヤン・シャレツ・リスト党(LMS)、アレンカ・ブラトゥシェク元首相が立ち上げたアレンカ・ブラトゥシェク同盟(SAB)、ミロ・ツェラル元首相が創設した現代中央党(SMC)なども議席獲得に必要となる4%の得票率に達せず、次期議会での政党数は2018年の9党から5党に減少した。2018年に52.64%まで下がった投票率は2004年以降初めて70%を超えた。

GSのロバート・ゴロブ党首(55歳)は、リュブリャナ大学で電子工学の博士課程を卒業したエネルギー経済の専門家だ。1999~2000年には経済副大臣としてスロベニアのEU加盟に向けてエネルギー戦略を策定し、2006年には国営エネルギー大手Gen-Iの社長に就任した。政界では、ゾラン・ヤンコビッチ元首相率いる「積極的なスロベニア」(PS)の副党首やSAB所属の議員を務めた経歴もある。

現地報道によると、2021年11月にヤンシャ首相がゴロブ氏のGen-Iの社長としての契約延長を拒否したことが今回の選挙への立候補のきっかけになった。2022年1月には同氏が環境保護の小政党の党首になり、「自由運動党」(GS)に改名した。Gen-Iの社長時代からメディアに登場することの多いゴロブ氏は、権威主義的な姿勢が近年目立つヤンシャ首相に対する不満を取り込んだと報じられた。

選挙結果を受けて、ゴロブ氏はできるだけ早く組閣に入りたいと述べた。連立パートナーとしては、GSがウェブサイト上で24日、中道左派の社会民主党(SD)と左派のLevicaを主要な対話者かつ協力者となるとした。選挙戦では、ゴロブ氏率いるGSは「グリーン経済への転換」や「社会福祉国家の近代化」などを公約した。親EU的でリベラルな基本姿勢は、現政権と大幅に異なるとみられる。4月27日付「スロベニア・タイムズ」は、ボルト・パホル大統領は5月23日前後に首相を指名する意向で、新政権の発足は6月上旬になると報じた。

(エッカート・デアシュミット)

(スロベニア)

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