米求人件数と離職者数が過去最高、退職者は再び労働市場に戻る傾向

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月09日

米国労働省が5月3日に発表した3月の雇用動態調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、求人件数が1,155万件、離職者数は454万人となり、2000年の調査開始以来、ともに過去最高となったことが明らかになった。いずれも2カ月連続の増加で、人手不足が常態化するとともに、労働者がよりよい雇用条件を求めて離職する動きが続いている可能性がある。

求人件数1,155万件に対し、採用人数は674万人で充足率は58%、新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年平均は約80%で、20ポイント以上低下している。求人率(注1)は7.1%で、2021年12月につけた過去最高値を再び記録した。一方で、採用率(注2)は4.5%と求人率を大幅に下回っており、3月の採用人数が2月を約10万人下回っていることも踏まえると、企業が採用したいと思う人材が労働市場で見つからない雇用ミスマッチが一部で起こっている可能性がある。

また、自発的に離職した人数は454万人、離職率(注3)は3.0%となり、離職率も2021年12月につけた過去最高値を再び記録した。レイオフなどの解雇による離職者数も含めた人数は632万人で、採用人数674万人に迫る水準となっており、採用した人数に近い人数が離職し、企業が求める水準の労働力を充足できていない現状がここでもうかがえる結果だった。

一方で、過去に退職した労働者が再び労働市場に戻っている兆候がある。求人情報会社のインディードによると、3月時点で1年前に退職した労働者の3.2%が再雇用されたとしており、パンデミック状況下の2020年に約2%まで落ち込んだ水準に比べると、2019年以前の水準にまで戻ったとしている。同社によると、新型コロナウイルス感染への懸念低下と、最近の高インフレによる家計圧迫が背景にあるとしており、リーマン・ショックの際も同様に過去の退職者が戻った動きがあったことや、現在の賃金上昇の傾向を踏まえると、こうした過去の退職者の労働市場への回帰は今後より一層加速する可能性があるとしている。

(注1)求人率=求人数/(雇用者数+求人数)

(注2)採用率=採用数/雇用者数

(注3)離職率=離職者数/雇用者数

(宮野慶太)

(米国)

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