米イリノイ州、VWの排ガス不正問題による和解金を公共交通機関の電動化に活用

(米国)

シカゴ発

2022年05月09日

米国イリノイ州のJ.B.プリツカー知事(民主党)は5月2日、2015年に米国で発覚したドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排出ガス不正問題によって受け取った和解金に関連し、その一部を州内の公共交通プロジェクトや電動化車両への置き換えに引き続き活用すると発表した。

同州政府は「VW和解金管理委員会」(注1)に対し、イリノイ州の和解金受け取り分のうち8,440万ドルの用途について、「ベネフィシャリー・ミティゲーション計画(Beneficiary Mitigation Plan)」の改定版を提出したことを発表した。これは、2015年に米国で発覚した同社の排出ガス不正問題で空気が汚染されたことによって被害を受けた州民(和解金を受け取る受益者)が環境被害を軽減するために和解金の用途を決めた計画だ。今回の改定版では、州内の車両などが排出する窒素酸化物(NOx)を削減するために、古いディーゼルエンジンを搭載した車両を電動化したスクールバスや貨物トラックなどに置き換える予定だ。イリノイ州環境保護局は、これまでにも2,430万ドル以上の同社からの和解金をシカゴ地域の公共交通プロジェクトや、同地域やメトロイースト地域のスクールバス電動化計画に対して交付してきた。イリノイ州政府は、今回の対象となる和解金8,440万ドルを以下のように割り当てる予定。

  1. 公共交通機関の電動バスと、旅客・通勤用電気機関車の整備・導入に最大32%、または約2,700万ドル。
  2. 電動スクールバスの整備・導入に最大32%、または約2,700万ドル。
  3. クラス 4-8 (中・大型)の電動貨物トラック(ごみ収集車、ダンプカー、コンクリートミキサートラックなど)の整備・導入に最大19%、または約1,600万ドル。
  4. 小型充電インフラの整備・導入に最大15%、または約1,270万ドル。
  5. イリノイ州観光保護局の管理費に最大2%、または約170万ドル。

プリツカー知事は「VW和解金は、米国内でも先進的なイリノイ州法の気候変動および雇用機会均等法(Climate and Equitable Jobs Act、注2)や、電気自動車・充電インセンティブと組み合わせることで、クリーンエネルギー化への移行をさらに早めることに役立つだろう」とし、「この和解金だけで、1億600万ドル以上を州内の電気自動車への改良とインフラの拡張に充てることができる」と述べた。

(注1)VWは米政府の排ガス規制を回避するためのソフトウエアを一部のディーゼルエンジン車に搭載し、大気浄化法(Clean Air Act)に違反したとの疑いで2016年に連邦政府に提訴され、和解金の支払いに合意した。

(注2)2021年9月に成立した州法で、気候変動対策と再生可能エネルギーへの投資、クリーンエネルギー関連産業での雇用創出について定めている。

(星野香織)

(米国)

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