欧州食品小売り部門、インフレと人手不足が懸念、新サービスも台頭

(EU、英国)

ブリュッセル発

2022年04月06日

欧州の小売・卸売業界団体ユーロ・コマースは3月31日、欧州各国の食品小売り部門の現況や今後についてまとめた報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。この報告書は同部門の主要60社の最高経営責任者(CEO)や欧州9カ国の約1万2,000人の消費者を対象に行ったインタビューや調査に基づく年次報告書で、今回が2回目の発行となる。

報告書によると、2021年の欧州の食品小売り部門の売上高は、特に第1四半期(1~3月)に飲食店の休業による内食需要が高まったこともあり、前年から0.6%減とほぼ横ばいで、新型コロナウイルス危機前の2019年に比べて9.9%増となった。しかし、販売量は商品価格の上昇の影響もあって前年比2.1%減だった。調査は2月下旬に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻以前に行われたが、調査に回答したCEOの約6割が2022年の市況は2021年より悪化すると回答。理由として、インフレの加速や、消費者が価格上昇に敏感になって価格競争が激化したことのほか、労働者不足や雇用関連コストの上昇、サプライチェーンの混乱などを挙げた。報告書は、2022年は健康や環境に配慮した高品質の製品を求める層も増えるが、一方で価格をより重視する層も増え、消費者の分極が進むと指摘。実際、2021年のディスカウント店の売上高は過去最高となったという。

欧州でも急拡大する「インスタントデリバリー」

報告書では、新型コロナ危機の間、消費者に急速に浸透したオンライン販売についても触れ、オンライン販売の成長は2022年には多くの国で緩やかになると予測した。一方で、販売形態が多様化し、消費者が実店舗での引き取りや、時間指定も可能な自宅への配送など、さまざまなサービスを使い分けていくとみる。

例えば、報告書では「インスタントデリバリー」と呼ばれる、オンラインでの注文を受けて、30分以内に配達する高速サービスについて取り上げた。インスタントデリバリー部門は2021年に欧州でも急拡大し、欧州の同部門上位15社が2021年末までに開店した「ダークストア」と呼ばれる配送拠点は800カ所を超えた。フランス、ドイツ、オランダ、英国のインスタントデリバリー利用者を対象とした調査では、回答者の33%が利用した理由に「極めて利便性が高い」ことを挙げた。また「追加で何かを購入するために利用した」との回答は全体の9%にすぎず、約75%が「これからも利用し続ける」とし、インスタントデリバリーが日常の買い物手段として定着し始めていることを示した。

急速な成長とともに、インスタントデリバリー部門では、ベンチャー企業のほか、大手小売りチェーンや既存のオンライン・フード・デリバリーサービス企業などの参入が相次ぎ、企業間の買収・合併も増え、競争が激化している。事業者の中には、化粧品など取扱品目の増加や顧客優待料金の設定といったサービスの拡充のほか、生産者からの直接調達、自社ブランド製品の割合を増やすなど、他社との差別化を図る企業もある。報告書では、資金調達や法規制、技術的な課題はあるものの、多様な企業が集まるマーケットプレース化や、保有データを活用したデータマネタイゼーション(収益化)を図るなど、同部門のビジネスモデルが変容していく可能性も指摘している。

写真 インスタントデリバリー企業の「ダークストア」。外装に「ご注文の品を10分で配達します」と書かれている(ジェトロ撮影)

インスタントデリバリー企業の「ダークストア」。外装に「ご注文の品を10分で配達します」と書かれている(ジェトロ撮影)

(滝澤祥子)

(EU、英国)

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