IoTで注目を集めるチリ発スタートアップ

(チリ)

サンティアゴ発

2022年04月20日

チリ発のスタートアップ企業ビガラブ(Vigalab)がモノのインターネット(IoT)分野で注目を集めている。4月13日付の「エル・ディアリオ・フィナンシエロ」紙は、南米で事業を展開する大手飲料メーカーのコンパニーア・セルベセリーアス・ウニーダス(Compañía Cervecerías Unidas:CCU)のオープンイノベーションプログラムがきっかけとなって開始したビガラブのパイロットプロジェクトを紹介している。同プロジェクトは、首都圏州内のバル(酒場)数軒で現在、たるからビールサーバーにつながる経路上に飲料の流れを感知するセンサーを取り付け、温度や賞味期限などの品質管理の向上によって顧客の満足度を高めるとともに、在庫管理を適正化し、店舗のロス減少にも貢献しようというもの。併せて、センサーによって得た情報をクラウド上で解析し、時間帯に応じた商品ごとの売れ行きなどのデータの副産物を提供する。このプロジェクトは6月まで継続し、その後は実証化へ向けた評価が行われる。

ビガラブのIoT技術導入事例は飲食業界だけにとどまらない。チリの主要産業の鉱業では、鉱山内の不安定な通信状況に鑑み、インターネット接続を行うことなく、センサーや人工知能(AI)を通じた膨大なデータの収集を可能にするソリューション「Mine-Watch」を開発した。導入に際して大規模な設備投資を必要としない点が中小規模の鉱業事業者にとっても大きなメリットとなる。「新型コロナ禍」の感染拡大を抑制する目的で開発したブレスレット型の「Co-Watch」は、恒常的な体温測定や装着者間のソーシャルディスタンスの確保、濃厚接触の特定などを可能にするツールで、大規模鉱山への導入実績も持つ。

チリ銅委員会(COCHILCO)によると、2020年の国内の銅生産量は573万3,000トンで、前年比で約1%減少した。しかし、2020年は年間を通じて新型コロナウイルスの影響で多くの鉱山の操業を制限していた状況に鑑みれば、中国などの諸外国の旺盛な需要に応え、ほぼ前年同様の生産量を保つことができたというポジティブな見方ができる。その下支えとして、ビガラブの開発したテクノロジーが機能したことは言うまでもなく、今後もこうしたスタートアップが伝統的な産業の在り方を変革し、多くのイノベーションをもたらされることが期待される。

(佐藤竣平)

(チリ)

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