米フードテック企業モチーフ、代替肉関連技術の特許取り消しを要求

(米国)

シカゴ発

2022年04月27日

米国フードテック企業のモチーフ・フードワークス(以下、モチーフ)は4月20日、米国代替肉大手インポッシブル・フーズ(以下、インポッシブル)が保有するヘム技術の特許を取り消すよう、米国特許商標庁に求めた。モチーフは「インポッシブルの保有する代替肉に関する特許は公知の技術をベースとしており、特許としての法的要件を満たさない」と主張している。ヘム技術は、大豆などから抽出したレグヘモグロビンというタンパク質を用いて肉の味や香りを再現する技術で、より肉らしい代替肉の製造に欠かせないものだ。

インポッシブルは2022年3月、モチーフが開発した牛肉代替食品が自社の特許を侵害しているとして、同社を提訴していた。今後、特許商標庁がインポッシブルの特許を無効と判断した場合、同社はヘム技術の独占権を主張できなくなり、今後の市場競争力を損なう恐れがある(AGファンダー・ニュース4月21日)。

代替肉分野で初の訴訟として注目

2019年に設立されたモチーフは、ビル・ゲイツを含む投資家から約3億4,000万ドルを調達しており、2021年の評価額は約12億3,000万ドル。一方、2011年に設立されたインポッシブルの評価額は約95億ドルとはるかに大きい。モチーフの広報担当者はインポッシブルの訴えについて、「(インポッシブルの)利益を維持するためにイノベーションを阻害し、消費者の選択を制限しようとする、法的にも事実上にも根拠のない試みだ」とし、特許商標庁が同社の特許を取り消すことを確信していると述べている。これに対し、インポッシブルの広報担当者はモチーフの申し立てについて、「彼らのビジネスを構築するためにわれわれの技術を不当に使用しているという事実から目をそらすための、根拠やメリットのない試みにすぎない」とし、「裁判と特許の両面で勝訴することを確信している」と述べている。

代替肉分野での知的財産権に関する訴訟は本件が初めてとみられ(AGファンダー・ニュース3月10日)、今後、同様の事案が発生した際のテストケースになり得るとして、その行方が注目されている。

(小林大祐)

(米国)

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