3月の米雇用者数は前月比43万1,000人増、失業率は3.6%で堅調維持
(米国)
ニューヨーク発
2022年04月05日
米国労働省が4月1日に発表した3月の非農業部門の雇用者数は前月から43万1,000人増加した。市場予想(49万人増)は下回ったものの、失業者数が前月から31万8,000人低下したことに加え、就業者数が73万6,000人増加したことにより、失業率は3.6%(添付資料図、表1参照)と、前月から0.2ポイント低下した(市場予想は3.7%)。
失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(88万8,000人)より10万1,000人減少して78万7,000人、恒常的な失業者数は前月(158万3,000人)より19万1,000人減少して139万2,000人となった。
労働参加率(注)は前月から0.1ポイント上昇の62.4%だった。3月の労働力人口は前月から41万8,000人増加している。
平均時給は31.73ドル(2月:31.6ドル)で、前月比0.4%増(2月:0.1%増)、前年同月比5.6%増(2月:5.2%増)と、ともに伸びが高まっている(添付資料表1参照)。
3月の非農業部門雇用者数の前月差43万1,000人増の内訳をみると、民間部門は42万6,000人増で、そのうち財部門が6万人増で、主な業種として製造業は3万8,000人増、建設業は1万9,000人増だった。サービス部門は36万6,000人増で、娯楽接客業11万2,000人増、対事業所サービス10万2,000人増、教育・医療サービス業5万3,000人増、小売業4万9,000人増と、ほぼ全ての業種で堅調に増加している。政府部門も5,000人増の微増で5カ月連続の増加だった。(添付資料表2参照)。
また、人種別の雇用状況について、3月の失業率は、白人3.2%(前月3.3%)、アジア系2.8%(前月3.1%)、ヒスパニック・ラテン系4.2%(前月4.4%)、黒人6.2%(前月6.6%)と、全ての人種で改善した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25ポイント引き上げるととともに、早期にFRBの保有する資産の縮小を始めることを示唆している(2022年3月17日記事参照)。加えて、ジェローム・パウエルFRB議長は今後の政策金利の引き上げ幅を0.5ポイントにする可能性も排除しない姿勢を示している。雇用者数の増加が引き続き堅調であったことに加え、平均時給の伸びが前月よりも加速した今回の雇用統計は、パウエル議長の政策金利引き上げ方針を支持する内容と言えそうだ。
一方で、景気減速が懸念されるデータも出始めている。3月31日に商務省が公表した2月の個人消費支出は、前月比0.2%増と1月の2.7%増から大幅に鈍化した。個人所得が前月比0.5%増加(1月0.1%増)し、貯蓄率も6.3%と前月から0.2ポイント増加しているにもかかわらず個人消費は鈍化しており、長引く物価高から人々は景気の先行きに悲観的になり、足元の消費を控え気味にしている可能性がある。実際に3月29日に発表された消費者信頼感指数では景気の先行き指数が悪化している。ロシアによるウクライナ侵攻の戦闘長期化に伴う原油高などが景気に悪影響を与え始めている中、FRBによる金融引き締めが景気にさらなる悪影響を与えるのでないかという懸念は根強い。5月に開かれるFOMCでどのようなメッセージがFRBから発せられるのか注目される。
(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。
(宮野慶太)
(米国)
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