IMF、サプライチェーン・リスク対策は国内回帰より多元化や代替品活用が有効と分析

(世界)

国際経済課

2022年04月18日

IMFは4月12日、「世界経済見通し」の第4章「パンデミック下の世界貿易とバリューチェン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した(注)。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックに端を発する世界の供給網の混乱を受け、多くの国・地域で、製造拠点などの国内回帰(リショアリング)の重要性を唱える声が高まった。しかし、IMFは、分散する拠点を国内に再集約する動きはむしろ一極集中による供給途絶のリスクを高める側面があるとして、警鐘を鳴らした。

パンデミックのみならず、ウクライナ情勢、サイバー攻撃や気候変動に関連した異常気象など各種の危機に対し、強靭(きょうじん、レジリエント)なサプライチェーンを構築するためには、調達先の多元化と原材料・部材の代替可能性の向上がカギとなる。多元化とは、国・地域をまたいだ調達先の複線化を指し、代替可能性とは国・地域の異なる仕入れ先への変更が容易に行えるかどうかを指す。IMFは、代替可能性向上の対応例として、電気自動車(EV)メーカーのテスラが、自社のソフトウェアを書き換え、代替の半導体を利用可能としたことや、自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)が、使用する独自の半導体チップの数を95%削減する標準化を行ったケースを紹介している。

分析では、ある世界的な供給大国で労働力が25%減少したと仮定した場合、平均的な他国・地域のGDPを0.8%押し下げることになるが、企業のサプライチェーンが多元化された条件下では、GDPの損失はその半分にとどまると試算した。また、元の供給国以外の国・地域で原材料・部材の代替が可能な場合、供給国を除く国・地域のGDP損失は約8割低減される。

サプライチェーンの多元化により、GDP成長率の振れ幅を減らす一定の効果も確認できた。ただし、新型コロナ禍当初のように、複数の国で生産能力が低下した場合、供給網の多元化は効果がないケースもある。

GVC集約産業、新型コロナ禍当初に大きな打撃

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年前半の世界の財貿易は大幅に落ち込んだ。とりわけ自動車、電気・電子機器、繊維・アパレル、医療品など、世界的な製造・流通工程(GVC:グローバルバリューチェーン)への依存度が高い「GVC集約産業」の輸出は、「新型コロナ禍」初期の2020年1~5月、減少幅はその他の商品の減少幅を上回った。

2国間貿易統計を精査した結果、特定の国・地域で行われたロックダウンが他国の輸入にもたらした負の影響は、「GVC集約型産業」およびサプライチェーンの下流でとりわけ顕著に現れた。なお、輸出国におけるリモートワークの導入により、供給制約によるマイナスの影響は一部緩和された。また、各国では、時間とともに移動制限下の経済活動への適応が進み、2021年に入ると、輸出国のロックダウンによる貿易の減少幅は2020年と比べ縮小した。

(注)本分析は、ロシアによるウクライナ侵攻前に行われたため、ウクライナ情勢が世界貿易とGVCに及ぼす影響には焦点を当てていない。

(森詩織)

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