第1四半期の米新車販売、前年同期比15.6%減、在庫不足などが影響

(米国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2022年04月07日

モーターインテリジェンスの発表(4月1日)によると、米国の2022年第1四半期(1~3月)の新車販売台数は、前年同期比15.6%減の331万7,241台となった(添付資料表1参照)。世界的な半導体チップ不足の影響などによる車両の供給不足が大幅減の要因となった。自動車関連サービス企業のコックスオートモーティブによると、第1四半期の新車の在庫日数は1年前のレベルから50%以上減少しており、短期的に通常レベルに回復する可能性は低いとみられている。

部門別にみると、乗用車が前年同期比22.8%減の69万3,733台、小型トラックが13.4%減の262万3,508台となり、全ての車種で2桁減となった。高価格帯の車両が多い小型トラックが全車種に占める割合は、データの確認できる1980年以降、第1四半期としては過去最大の79.1%となっている。また、在庫不足を理由に、各メーカーが購入者向けに提供する割引額を抑制したため、1台当たりの推定平均価格は、2013年以降で最高値の4万3,841ドルとなった(トゥルーカー・ドットコム3月30日)。

主要メーカー別にみると、テスラ以外のメーカーが前年同期比減となった。トヨタは14.7%減の51万4,592台と落ち込んだが、シェアではゼネラルモーターズ(GM)を上回り全米首位となった(添付資料表2参照)。新たに市場投入されたスポーツ用多目的車(SUV)「カローラクロス」などは好調だったが、乗用車「カローラ」「カムリ」などが減少し、全体を押し下げた。次いで、GMが20.4%減の50万9,122台だったが、「トレイルブレイザー」や「トラバース」などSUVの減少が目立った。フォードは17.1%減の42万9,174台となった。ピックアップトラック「Fシリーズ」など、人気モデルの販売台数が減少した。また、ステランティスは13.6%減の40万7,089台、ホンダは23.2%減の26万6,418台、日産は29.6%減の20万1,081台だった。韓国メーカーの現代と起亜は、他のメーカーに比べて減少幅が小さく、それぞれ2.3%減、5.2%減にとどまった。そうした中、電気自動車メーカーのテスラは前年同期比87.2%増と大幅に伸び、フォルクスワーゲン(VW)を抜いて初めてメーカー別シェア第10位に浮上した。

電動車両は3割増も、サプライチェーンに課題

新車販売台数のうち、ハイブリッド車(HEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)を合わせた電動車両は、前年同期比29.4%増の39万7,022台で、全車に占める割合は12.0%となった。中でもBEVは、テスラのSUV「モデルY」や乗用車「モデル3」が大幅に伸びたため、全体で72.7%増となり、全車に占める割合は5.2%に達した。 このようなBEVの普及状況について、自動車調査を専門とする米国の非営利団体センター・フォー・オートモーティブ・リサーチ(CAR)のリサーチマネジャーであるレベッカ・リズースキー氏など多くの専門家は、3月に急騰したガソリン価格が影響しているとみている。

EV市場が拡大する一方、ロシアによるウクライナ侵攻に起因するバッテリー原材料の価格高騰が懸念されている。報道によると、ロシアはEV用に精製されたニッケルの世界生産能力の約17%を保有しており、同国に対する各国の経済制裁の影響などを受けて、ロンドン金属取引所のニッケル取引価格は大幅に上昇している(オートモーティブニュース3月30日)。ブルームバーグは「ニッケルの価格高騰とウクライナ侵攻の影響から、特に米国の電池メーカーは代替のサプライチェーンを確保する必要がある」と警鐘を鳴らしている(3月30日)。

(注)フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSAが2021年1月16日に経営統合した。

(大原典子)

(米国、ロシア、ウクライナ)

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