ペルー議会がカスティージョ大統領の罷免決議案を否決

(ペルー)

リマ発

2022年03月30日

ペルー議会(定数130)は3月28日の本会議で、ペドロ・カスティージョ大統領の罷免決議案を賛成55票、反対54票、棄権19票で、可決に必要な3分の2の87票に届かず、否決した。同決議案(罷免決議理由は添付資料参照)は、3月8日付で右派のレノバシオン・ポプラール(人民一新:RP)党スポークスマンのホルヘ・モントージャ議員を起案者として、50人の野党議員の署名を得て提出されていた。政党別では、与党・急進左派のペルー・リブレ(ペルー自由:PL)党(32人)のほか、ペルー・デモクラティコ(ペルー民主主義:PD)党(7人)、フントス・ポル・エル・ペルー(ペルーとともに:JPP)党(5人)などの左派政党全議員と、中道派のアリアンサ・パラ・エル・プログレッソ(進化のための同盟:APP)党とソモス・ペルー(われわれはペルー:SP)党の一部議員などが反対票を投じた。結果を大きく左右したのは19の棄権票だが、そのうち13票を投じたアクシオン・ポプラール(人民行動:AP)党のスポークスマン、エルビス・ベルガラ議員は「数々の疑惑が捜査中である以上は、罷免決議でなく、憲法告発小委員会での審議であるべきだ」との見解を示した。一方で、AP党派には水面下で政権側との癒着疑惑(注)も出ており、同党の多くの議員が棄権した背景を疑問視する声も少なくない(党派別の投票結果は添付資料表参照)。

カスティージョ大統領は結果を受けて自身のツイッターで「分別と責任感と民主主義が優先されたことを歓迎する。全ての議員の決断を尊重し、今後は国のために一丸となって働くことを求める」とコメントした。産業界からのコメントは現時点では出ていないが、3月18日付で自社のペルーに対する長期個別信用格付けを「BBB+」から「BBB」に引き下げたS&Pグローバル・レーティングは「ヘスティオン」紙の取材に「政府と議会の対立はペルーの成長機会を阻害する大きな不安定要素となる」とコメントしている。

(注)カスティージョ大統領と大統領府内外で接触し政府契約に便宜を図る交渉や裏金工作などで捜査中のロビイストのカレリン・ロペス氏が司法取引証言として、AP党議員6人が非公式に政権側と癒着している事実を当時のブルーノ・パチェコ大統領秘書官から聞いたと述べている。

(設楽隆裕)

(ペルー)

ビジネス短信 d16e8bb317fa7a4f