イスラエル各地で武装テロが相次いで発生

(イスラエル)

テルアビブ発

2022年03月31日

イスラエル現地紙「タイムズ・オブ・イスラエル」は3月29日、テルアビブの東方5キロ郊外に位置するブネイ・ブラクで、自動小銃を使用した武装テロが発生し、外国人労働者2人、警察官1人、容疑者1人を含む6人が死亡したと報じた。ブネイ・ブラクはユダヤ教超正統派が多く居住する地域で、翌30日付の同紙は、パレスチナ解放機構(PLO)主流派の政治組織「ファタハ」につながる武装組織「アル・アクサ殉教者旅団」がビデオ映像とともに犯行声明を出したとしている。

一連の報道によると、犯行はヨルダン川西岸地区出身のパレスチナ人が単独で行ったとされる。容疑者は過去にテロリストグループによる武器密輸に関わったとして、イスラエルで収監された経験があり、その後はイスラエル国内で不法滞在していたという。29日付「ハアレツ」紙は、容疑者は収監中には「ファタハ」構成員だったが、イスラエル治安当局としては、今回の犯行を特定組織の支援があったとはみていないという。

イスラエル国内ではこの1週間余り、南部ベエルシェバ(3月22日)や北部ハデラ(27日)で、死傷者を出すテロが相次いで発生している。ベエルシェバでは刃物が使用され、容疑者1人を含む5人が死亡、ハデラではブネイ・ブラクでの事件と同様に自動小銃が使用され、警察官2人と容疑者2人の計4人が死亡した。この2件はいずれも「イスラム国(IS)」の通信社が犯行声明を出しているという。

同国では昨今、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織「ハマス」や、イランの支援を受けているとされる「パレスチナ・イスラーム聖戦」によるロケット攻撃やテロ活動への警戒が続いてきた。しかし、今回の一連のテロ行為では、ISや、PLO主流派で対イスラエル穏健派とも言われる「ファタハ」とつながる「アル・アクサ殉教者旅団」からも犯行声明が出されたことから、当局による治安活動が多面的かつ一層強化される可能性が高く、注視が必要となるだろう。

(吉田暢)

(イスラエル)

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