違法輸入中古車の合法化手続き簡素化、ディーラー協会は規制緩和の悪影響を懸念

(メキシコ)

メキシコ発

2022年03月02日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は2月27日付官報で政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、1月19日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公布した違法輸入中古車の合法化に向けた手続きを簡素化した。AMLO大統領は2021年10月17日、出張中のバハカリフォルニア州で行政命令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名し(2021年10月20日記事参照)、国境地帯で違法輸入の状態にある中古車の合法化に向けた措置の適用を関連省庁に命じ、2022年1月19日付官報で具体的手続き事項を定める政令を公布していた。今回の簡素化措置は主に以下の内容からなる。

  1. 対象州として、従来の北部国境州(バハカリフォルニア州、南バハカリフォルニア州、ソノラ州、チワワ州、コアウイラ州、ヌエボレオン州、タマウリパス州)とドゥランゴ州、ナヤリ州、ミチョアカン州に加え、シナロア州とサカテカス州を追加。
  2. 合法化に際しては、通関士などを通じた確定輸入申告手続きを不要とする。
  3. 違法中古車の所有者がメキシコ国家税関庁(ANAM)に対して、車両を見せることなく、定型宣誓文書を車両公式登録(REPUVE)に電子媒体や紙媒体で送付するだけで合法化を認める。
  4. REPUVEは宣誓文書受領後に車両登録証を発行し、所有者は同登録証の車両への貼付のためにREPUVE事務所に出頭する。
  5. 違法輸入車両合法化の期限を2022年7月20日から同年9月20日に延長する。

AMDAは新車・正規中古車市場への悪影響を懸念

今回の簡素化で最も大きな意味を持つのが確定輸入申告義務の廃止だ。これにより、車両所有者は確定輸入申告をする必要がなくなり、また、税関当局が対象車両の検認を行う必要もなくなった。違法車両所有者は2,500ペソ(約1万3,900円、1ペソ=約5.57円)の手数料を支払い、定型宣誓文書に所定事項を入力して送付するだけで、同文書が税関に対しても車両の輸入ステータスと合法的な所有を示す文書として認められる。

メキシコ自動車ディーラー協会(AMDA)は2月28日、ホームページでプレスリリースを出し、今回の措置が新車市場と正規中古車市場にさらに大きな悪影響を及ぼすと警鐘外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを鳴らした。特に、輸入申告を不要とすることにより、車両所有者の宣誓だけで合法化が認められることになり、また、申告文書を審査する主体(税関)もなくなることで、本来は輸入や合法化が認められない車両(メキシコや北米で合法的に走行できない車両、安全基準や排ガス基準などを満たさない車両、盗難車両、犯罪に使われた車両など)でも合法化されてしまう可能性が高いという。また、本来は2021年10月19日以前に対象州内に存在した車両のみが合法化対象となるが、チェック機能が働かないため、それ以降に違法輸入された車両でも合法化対象になり得てしまう。

同簡素化はメキシコで走行する車両の老朽化につながるほか、合法的なナンバープレートが一度取り付けられれば、対象州以外の他州で走行したり、販売されたりされ得る。AMDAは、同措置が類似の新車や正規中古車の販売を20%減少させる可能性があるとし、古い中古車からより新しい中古車、中古車から新車への買い替えに悪影響を与えると懸念する。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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