UNCTAD、ウクライナ紛争の影響を盛り込んだ世界経済見通し発表
(世界)
国際経済課
2022年03月25日
国連貿易開発会議(UNCTAD)は3月24日、貿易開発報告書の更新版を発表(英語)した。この中で、2022年の世界の経済成長率を2.6%とし、2021年9月の前回発表時の見通し(3.6%)から1ポイント引き下げた(添付資料表参照)。今回の見通しには、2つの新たな変動要因として、ウクライナ紛争と先進国・地域のマクロ経済政策の引き締めの影響を盛り込んだ。UNCTADは「食料と燃料の価格の上昇による収入のさらなる圧迫、制裁に伴う世界貿易の縮小、信頼と金融不安の再発などに代表される紛争の経済的残響が成長率見通しの大幅な下方修正につながった」とした。
国・地域別にみると、ロシアの見通しを9.6ポイント引き下げ、マイナス7.3%とした。ウクライナ紛争が終了しても制裁措置が2022年まで有効と仮定し、経済活動が大幅に縮小すると見込む。「ロシアは依然として石油とガスを輸出しているため、この価格高騰による収入増が制裁の影響を一部緩和することが見込まれる」としながらも、制裁措置によって輸入や債務返済のための外貨使用が厳しく制限されることから、「幅広い輸入品の深刻な不足、高インフレ、大幅な通貨の切り下げを経験する」などと指摘した。
主要国・地域では、欧州の見通しを2.1ポイント引き下げ0.9%とした。UNCTADは「商品価格の高騰とウクライナ紛争の両方によって、より大きな打撃を受ける」とし、「欧州全体で食料と燃料の価格の上昇は国内支出を抑制し、総需要が弱まる」と見通した。 欧州の中では、ドイツの見通しを1.8ポイント引き下げ1.4%とした。「ロシア連邦からの天然ガスの輸入と、制裁と紛争によって混乱するだろう製造業の輸出に大きく依存している」点に言及した。
その他の主要国・地域では、米国の見通しを0.6ポイント引き下げて2.4%とした。米国は紛争による直接的影響は比較的軽微としながらも、「燃料と食料価格の上昇による消費支出へのさらなる圧力から、燃料補助金のかたちで財政対応を導入する可能性がある」と指摘。「米国の消費支出は(新型コロナウイルスの)パンデミック前の傾向に戻っているが、インフレ圧力と信頼感の欠如が減速を引き起こす」などと分析した。
(朝倉啓介)
(世界)
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