参天製薬、眼科医療従事者育成のアジア展開でシンガポール国立眼科センターと提携

(シンガポール)

シンガポール発

2022年03月22日

参天製薬(Santen)の古山邦彦ビジョン・ソーシャル・イノベーション室長は3月8日、ジェトロとのインタビューで、シンガポール国立眼科センター(SNEC)との共同開発による眼科テクニシャン向けの教育プログラムを通じて、アジアの人口高齢化に伴い拡大する眼科治療の需要に対応していく考えを示した。

参天製薬とSNECは2021年9月30日、眼科医師を支える看護師や検査技師などの眼科医療従事者を対象とした教育プログラムの共同開発と国際展開で、戦略パートナーシップを締結したと発表した。古山室長は提携の経緯について、「本戦略パートナーシップは、アジアでさらなる増大が見込まれる眼疾患に対応し、人々の目の健康を実現していくために、両者の戦略提携をさらに発展させ、どのような取り組みが可能か、ということについてトップを含めた共同ワークショップを実施。その後のフォローアップ協議を重ね創出されたもの」と説明。同室長によると、SNECの教育プログラムをデジタル化し、オンライン・オフライン融合型のプログラムに転換の上、同教育プログラムをシンガポールおよびアジアの国々に、各国の眼科教育機関と協働して展開していく計画だ。参天製薬はプログラムの海外展開に当たり、同社の製薬事業の国際展開を通じて培ったネットワークや、プロジェクト管理ならびに事業開発のノウハウを提供する予定だ。

古山室長は、人口の高齢化で眼科治療を求める患者が増えており、限られた医療資源を効率化することが求められていると指摘。「眼科医療従事者が質の高い教育を受けることで、医師からより多くのタスクを引き受け、眼科治療を担うチーム全体の質と生産性を高められる」と述べた。

参天製薬は2020年6月、近視から子供たちの目を守るスマートフォン・アプリを開発・提供しているシンガポールのスタートアップ、プラノ(Plano)に出資し、戦略提携を結んだ。同社は現在、Planoの中国への進出を支援している。また、同社は、シンガポール眼科研究所(SERI)と、軽度・中程度の近視を対象とした薬剤「DE-127」(アトロピン硫酸塩)の共同開発を進めている。古山室長は「シンガポールは官民問わずイノベーションを推進し、アカデミアやスタートアップとの共創を促進するエコシステムが充実している。また、国として最初から世界展開が視野に入っている。イノベーション拠点としてさまざまな魅力が詰まった場所だ」との見方を示した。

(本田智津絵)

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