国連アフリカ経済委員会が域内FTAのレポートを発表、コストや手続き面での課題を指摘

(アフリカ、アンゴラ、コートジボワール、ガボン、ケニア、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ共和国)

中東アフリカ課

2022年03月30日

国連アフリカ経済委員会(ECA)は2月28日、「AfCFTA国別ビジネス指標(ACBI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。ACBIは、アフリカ各国の企業を対象に、現在運用されている域内の自由貿易協定(FTA)について、項目ごとにアンケート調査を行い、それを10点満点で指標化したもの(注1)。FTAの課題を特定することで、AfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)などさらなる経済統合に向けた政策形成に寄与することを目的としている。今回は、アンゴラ、コートジボワール、ガボン、ケニア、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ共和国が対象(注2)で、「貿易環境(物品貿易)」「アフリカにおけるFTAの認知と利用」「商業環境(サービス貿易)」の3つの分野で調査が行われた。

「貿易環境」については、物品貿易に関するもので、衛生植物検疫措置(SPS)と技術的障害(TBT)は、ともに5点以上とスコアが高く、企業にとっては大きな障害に捉えられていないことが示された(添付資料表参照)。一方、不正請求や貿易・税関における手続き、その他費用(注3)はスコアが低く、行政部門の汚職のほか、煩雑な手続きとそれに伴うコストの増加が企業の貿易活動の障害になっていることが示唆される結果となった。国ごとにみても、全ての国で5点を下回り、特にナイジェリアは平均3.9点と全ての項目で最も低く(注4)、物品貿易における障害が多いことが示された。

「アフリカにおけるFTAの認知と利用」については、域内のFTAについてどの程度認知されており、かつどの程度利用しやすいと考えているかを明らかにしている。FTAの認知度合いは6.9点と、多くの企業が、自国がAfCFTAを含むさまざまなFTAに加盟していることを認知していることが明らかとなった。また、情報へのアクセスやFTAの使いやすさといった項目についても5点を上回った。一方、原産地規則については中間点に届かず、域内貿易の障害の1つとなっていることが示された。なお、AfCFTAへの参加に関する企業の認知度合いは、ナイジェリアが84%、南アが74%となった一方、アンゴラは34%だった。

「商業環境」については、サービス貿易に関連する国内制度・規制にかかる評価で、全体的には5点前後と肯定的な回答が多かったが、コストと可用性、競争政策については5点をやや下回った。国別では、コートジボワール、ナミビア、南アで肯定的な回答が多かった一方、ガボン、アンゴラ、ケニアでは否定的な回答が目立ち、サービス貿易にかかる一層の環境整備が必要なことが示された。

以上を踏まえ、ACBIは、各国およびアフリカ全体での通商政策の改善、域内貿易および投資促進に向けた協定への批准・署名、行政手続きの簡素化、などを政策提言として挙げた。

(注1)それぞれの国につき最低50人の回答者を対象としている。

(注2)ジェトロが確認したところ、国別のスコアについては、レポート内で示されてない分野や、グラフと本文との間で数字の齟齬(そご)が確認された。

(注3)不正請求は、国境や輸送ルートにおける贈収賄や汚職を指す。その他費用は、追加関税、国境税、製品課徴金、価格統制、基準価格、商品にかかる追加変動費、統計税、輸入承認にかかる手数料などを指す。

(注4)この分野については、他の分野と異なり、項目ごとの国別スコアをまとめたグラフがなく、本文中にもナイジェリア以外のスコアは示されていない。なお、他の分野については国ごとのスコアがグラフでまとめられているため、レポートを参照のこと。

(梶原大夢)

(アフリカ、アンゴラ、コートジボワール、ガボン、ケニア、ナミビア、ナイジェリア、南アフリカ共和国)

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