2022年度予算、物品・サービス税、個人所得税、炭素税など引き上げ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年03月17日

シンガポール国会は3月10日、2月18日に提出された2022年度(2022年4月~2023年3月)政府予算案を可決した。同予算案では、将来の歳出増に対応するために、物品・サービス税(GST)や個人所得税、不動産税の引き上げのほか、環境問題対策のための炭素税引き上げも盛り込まれた。

ローレンス・ウォン財務相は翌11日、今回の予算審議で最大の争点となったのはGST引き上げについてだったと自身のフェイスブックで述べた。ウォン財務相は、予算案ではGSTを2023年1月1日から現行の7%から8%に引き上げるとともに、2024年1月1日からはさらに9%へと2段階で引き上げる計画を明らかにしていた。GST引き上げによる増収は、人口高齢化に伴う保健歳出の増加に充てる。財務相は審議で、GST引き上げに代わる複数の代替案が提出されたが、「(代替案では)歳入不足を補うだけの財源にならない」と述べた。

また、政府は、医療費の増加に対応するにはGST引き上げだけでは不十分だとして、個人所得税、不動産税、車両関連の税金も、高所得者層を対象にそれぞれ引き上げる。このうち、個人所得税については、2024賦課年度から50万シンガポール・ドル(約4,350万円、Sドル、1Sドル=約87円)を上回る課税所得(100万Sドル以下)に対する税率を現行の22%から23%へ、100万Sドルを上回る課税所得者に対しては、税率を22%から24%へとそれぞれ引き上げる。不動産税は、非居住住宅について現行の10~20%から、2024年1月1日より12~36%へと引き上げる。居住住宅については、年間価値が3万Sドルを超える物件に現行の4~16%から、2024年1月1日より6~32%へと引き上げる予定だ。このほか、車両の追加登録料(ARF、注1)も高級車を対象に引き上げる。ARFはこれまで公開市場価格(OMV)の100~180%と設定していたが、2022年2月の2回目以降の自動車所有権証書(COE、注2)の入札以降、8万Sドルを超える車種のARFを、OMVの220%へと引き上げる。

炭素税、2030年までに温室効果ガス1トン当たり50~80Sドルに

一方、ウォン財務相は2月18日発表の政府予算案で、温室効果ガス1トン当たり5Sドルの炭素税を、2024~25年に25Sドル、2026~27年に45Sドルへそれぞれ引き上げると発表した。政府は炭素税を最終的に2030年までに50~80Sドルまで引き上げる方針だ。炭素税の引き上げは、21世紀半ばまでに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロとする目標を達成するため、企業などが排出量削減への取り組みを促すのが狙い。

(注1)追加登録料(ARF)は、車両を新規登録する際に自動車所有権証書(COE)や道路税などと併せて課す車両関連の税金の1つ。

(注2)シンガポール政府は自動車購入の際に自動車所有権証書(COE)の取得を義務付け、自動車登録台数の伸びを調整。COE価格は毎月2回の入札で決定する。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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