フランス、大型水素プロジェクト15件に総額17億ユーロを助成へ

(フランス)

パリ発

2022年03月16日

フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務・復興相は3月8日、産業ガス大手エア・リキードが北西部ノルマンディー地域圏のポール・ジェローム・シュル・セーヌ市に建設するグリーン水素製造施設を訪問し、政府が水素サプライチェーンの構築に向けて「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」の枠組みで助成する、15件のプロジェクトを公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会からの承認を得られ次第、総額17億ユーロを超える補助金を支給する(注)。

15件のプロジェクトの内訳をみると、4件は水電解装置の開発・製造、6件は水素モビリティおよびその部品・素材の開発・製造で、グリーン水素製造および水素を活用した工場の脱炭素化プロジェクトが5件だった(添付資料表参照)。

エア・リキードはポール・ジェローム・シュル・セーヌ市にプロトン交換膜(PEM)を用いた200メガワット(MW)のグリーン水素製造施設を建設し、製油所が集積するセーヌ川沿いの工業地域に水素を供給する。また、同プロジェクトは年間22万トンの二酸化炭素(CO2)排出量の削減および、年間5万トンの天然ガスの消費量削減を通じエネルギー安全保障の確保に貢献する(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

水電解装置の製造では、水素スタートアップ企業のマクフィーが東部ベルフォール市に建設を予定する1ギガワット(GW)級の容量を持つアルカリ水電解装置の製造工場建設プロジェクトや、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)の高温可逆固体酸化物電解技術を利用した高性能水電解装置の量産化プロジェクトなどが選ばれた。

外国企業では、ベルギーのコングロマリット(複合企業)ジョン・コケリル・グループのアルザス地方アスパッハ=ミシェルバッハ市における水電解装置の工場建設、および欧州鉄鋼アルセロールミタル(本社:ルクセンブルク)によるフランス北部ダンケルク工場の脱炭素化プロジェクトが選ばれた。

なお、フランスは2020年9月に発表した「国家水素戦略」(2020年9月10日記事参照)で、2030年までに70億ユーロを投資し、国内に6.5GWのグリーン水素製造設備の設置を目標に掲げた。エマニュエル・マクロン大統領は2021年11月、「グリーン水素製造で世界トップになる」べく、投資プラン「フランス2030」(2021年10月14日記事参照)の枠内で水素産業振興に19億ユーロを追加投資すると発表していた。

(注)EUでは、域内の競争条件をゆがめる恐れがある国家補助を原則禁止しているが、EU域内の経済成長と雇用、産業競争力の強化に資するなどの条件を満たす場合は、IPCEIにより個別企業への助成を認めている。

(山崎あき)

(フランス)

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