欧州委、ディーセント・ワークを推進する戦略を発表

(EU)

海外調査部

2022年03月02日

欧州委員会は2月23日、EU域内外双方のディーセント・ワークを擁護するEUのコミットメントを再確認する「世界のディーセント・ワーク」に関する政策文書(コミュニケーション)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同政策文書は、EUのディーセント・ワークに関する今後の指針となるもので、児童労働と強制労働の撲滅がこの取り組みの中心になるとしている。

ILO駐日事務所HP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことで、権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味するとしている。また、全ての人が収入を得るのに十分な仕事があることだという。

欧州委は、世界で1億6,000万人の子供(世界の10人に1人)が児童労働に従事し、2,500万人が強制労働の状況にあると指摘。EUは、域内外およびグローバルサプライチェーンにおける労働者に対応する包括的なアプローチに従い、全部門と政策分野にわたりディーセント・ワークを推進するとしている。今回発表した政策文書は、EUが世界でディーセント・ワークを実施するために域内外で利用する政策を設定するもの。より具体的には、次の4分野で構成される。

(1)企業持続可能性デューディリジェンス指令(2022年2月28日記事参照)の立法など、EUを超えた範囲に届く政策・イニシアチブ

(2)国際労働基準を推進するEUの通商政策や近隣諸国政策など、EUの2国間・地域政策

(3)ディーセント・ワークに関する国連措置の実施支援やグローバリゼーションの社会的側面を統合するWTO改革の支援など、国際・多国間フォーラムにおけるEUの役割

(4)社会的パートナーや市民社会などの利害関係者に加え、グローバルなパトナーシップにおける利害関係者に対するEUの関与・支援

欧州委は同日、(1)の一部として、企業持続可能性デューディリジェンス指令案を発表し、グローバルなバリューチェーン全体で持続可能で責任ある企業行動を促進することを提案している。

強制労働による製品の輸入禁止法案措置を準備中

また、欧州委はこの包括的なアプローチの一環として、強制労働により生産された製品をEU市場に投入することを効果的に禁止する新たな法案措置を準備しているとしている。同措置は、EU域内外で生産された商品を対象に、強力な施行枠組みと禁止措置を兼ね備えたものになるという。

なお、次のステップとして、欧州委は今回の政策文書で設定したアプローチについて、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)に対して承認と、そのための行動実施の協力を要請している。欧州委はまた、同政策文書の実施状況を定期的に発表する。

(田中晋)

(EU)

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