ADB報告書、新型コロナ禍でアジア大洋州の経済統合深化

(アジア)

アジア大洋州課

2022年02月24日

アジア開発銀行(ADB)は2月9日、「アジア経済統合報告書2022年版外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同報告書の中で、新型コロナウイルス感染拡大やサプライチェーン制約がある中でも、貿易がアジア大洋州域内経済の回復に貢献したと分析した。2021年1~9月期の世界貿易額が27.8%成長した中、同地域の貿易額はそれを上回る29.6%成長した。域内貿易の比率は、2020年時点で58.5%、1990年以降では最高の水準となった。また、アジア大洋州地域への海外直接投資も底堅さを維持した。2020年は世界全体で投資額が前年比34.7%減少する中、同地域での減少率は1.3%にとどまったという。

同報告書は、新たに発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定など貿易・投資を促進させる枠組みが域内貿易と経済統合を前進させ、新型コロナウイルス感染拡大の影響からの持続可能な復興を後押しするとしている。アルバート・パークADBチーフエコノミストは「(同地域における)貿易とバリューチェーンの連携が強化されていることは、新型コロナウイルス感染拡大による影響からの強い復興に向けた明るい兆し」とした上で、「われわれは、地域統合と協力の成果を礎にさらに取り組みを重ね、包摂的かつ持続可能な経済成長への復興を支援していかなければならない」と述べた。

報告書の特別テーマを取り上げた章では、急速なデジタル化と新型コロナ感染拡大がデジタル関連サービス貿易の成長をどのように促しているかに焦点を当て、デジタル関連サービス貿易を推進する重要性についても報告している。例えば、急速なデジタル化はサービス貿易の障壁除去につながることや、欧米諸国との間にあるデジタル技術の差を埋めるためには、人材育成とデジタル接続の向上、情報通信技術(ICT)投資、規制改革と制度構築などが必要とされることなどを論じている。

(新田浩之)

(アジア)

ビジネス短信 f25235f16af67cb6