欧州の共同核融合研究機関、記録的な核融合エネルギー放出に成功

(欧州、英国)

欧州ロシアCIS課

2022年02月16日

英国政府は2月9日、欧州の核融合研究機関などからなるコンソーシアムであるユーロフュージョン(EUROfusion)が、記録的な59メガジュールの持続核融合エネルギーの放出に成功したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

今回発表された結果は、オックスフォードにある英国原子力公社(UKAEA)の欧州トーラス共同研究施設(JET)で記録された。これまでJETによって達成された核融合エネルギーの記録は1997年の21.7メガジュールで、今回はその2倍以上になった。

英国政府およびユーロフュージョンは今回の成果について、脱炭素エネルギー生産を通じて気候変動の影響に対処する圧力が高まる中、世界的なエネルギー危機に取り組むための安全で効率的な低炭素手段としての核融合開発ロードマップの大きな前進だ、と評価している。

英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省のジョージ・フリーマン科学・研究・技術革新担当相は今回の結果について、「核融合エネルギー研究の世界的リーダーとしての英国の役割を証明している。これらは、英国で行われている革新的な研究と革新が、欧州中のパートナーとのコラボレーションを通じて、核融合力を実現していることの証拠だ」と述べた。また、UKAEAのCEO(最高経営責任者)であるイアン・チャップマン氏は「気候変動の影響に対処するために重要な変更を加える必要があることは明らかで、核融合は非常に多くの可能性を提供する。私たちは知識を構築し、将来の世代のために地球を保護するのに役立つ低炭素で持続可能なベースロード電源(注2)を提供するために必要な新しい技術を開発している」として、核融合技術の必要性を強調した。

英国では商用核融合エネルギー開発に関する戦略を策定済み

英国では2021年10月に核融合エネルギー開発に関する戦略が策定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。本戦略は、核融合エネルギーは低炭素で安全、かつ継続的で、事実上無制限のエネルギー源となる究極のクリーンな電力ソリューションになる可能性があると位置付け、2040年までに核融合発電所を建設するとしている。

(注1)核融合研究とは、質量の小さな原子の原子核同士を人工的に融合させ、より大きな原子核へ変換させる核融合反応を起こし、電気・熱などのエネルギーを発生させることを目指す研究。

(注2)ベースロード(base load)とは、一定期間における電力需要の最低水準(基礎負荷)。季節や時間を問わず、低廉かつ安定的に発電できる電源を「ベースロード電源」という。

(菅野真)

(欧州、英国)

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