マッタレッラ大統領、議会で8回の投票で続投決まる

(イタリア)

ミラノ発

2022年02月02日

イタリア議会は1月29日に大統領選出に向けた8回目の投票を行い、現職のセルジオ・マッタレッラ大統領の続投が確定した。投票は24日から6日間連続で行われたが、各政党の推す候補者が定まらずに難航した。

1月30日付「ラ・レプブリカ」紙によると、マッタレッラ氏は当初、再任を拒んでいたが、選挙で決着つかず、同氏続投を望む声が高まった。7回目の投票後にマリオ・ドラギ首相があらためて慰留し、マッタレッラ氏が受け入れた。大統領が続投するのは、イタリアの共和国体制史上で2回目。

大統領選はイタリア議会と各州から3人の代表者によって選出される(注)。候補者を立てない選挙方式のため、票が分かれやすく、過去には10日以上費やしたことも複数回ある(1月29日付公共放送RAI)。マッタレッラ大統領の獲得票は、7回目の投票では1,009票中387票にとどまったが、最終的には過半数の505票を大きく上回る759票に達した(1月29日付「イル・ソーレ24オーレ」紙)

直後の各紙の報道によると、ドラギ首相は「みんなの勝利だ。団結の結果だ」とコメント。ポピュリズム左派の「五つ星運動」のルイジ・ディ・マイオ外務・国際協力相も、マッタレッラ大統領の献身に感謝したいと述べた(1月29日付「ラ・レプブリカ」紙)。

8回目の投票直前まで右派の候補者を推していた「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首も、このまま拒否権を行使するよりも、ドラギ首相とマッタレッラ大統領の続投を望むと表明(1月29日付公共放送RAI)、中道左派の「民主党」エンリコ・レッタ党首も「最善の解決策で、政権も強化される」と歓迎した(1月30日付公共放送RAI)。

投票前に公表された調査機関デモポリスの世論調査によると、マッタレッラ大統領再任について「賛成」が58%、「反対」が27%で、世論も反映された結果となった。

産業界からは、イタリア産業連盟のカルロ・ボノーミ会長が1月29日付のプレスリリースで、同連盟の総意として再任を歓迎し、エネルギー価格高騰などの喫緊の問題に直面している今、投票を長引かせないようにした議会の決断に謝意を示した。

市場は大統領続投によるドラギ政権維持を評価し、31日のミラノ証券取引所は株価指数が0.8%上昇した(同日付「イル・ソーレ・24オーレ」紙)。

歓迎モードの一方、30日付の「コリエーレ・デラ・セーラ」紙は後継者を選出できなかったことを指摘。候補者として多くの政治家の名前が挙がったものの、決定力に欠け、政党の総意が得られない現状を憂慮する論説を展開した。

(注)バッレダオスタ州のみ1人

(平川容子)

(イタリア)

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