EUエネルギー集約型産業5団体、CBAM設置規則案への共同提言を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年02月04日

欧州委員会が2021年7月に提案した炭素国境調整メカニズム(CBAM)の設置に関する規則案(2021年7月16日記事参照)で対象とした品目のうち、電力を除く、セメント、鉄鋼、アルミニウム、肥料部門の5団体(注)は1月27日、規則案についての共同政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(提言書は1月25日付)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

5団体はまず、規則案ではCBAMの本格実施に伴い2026年から段階的に削減するとしている現行のカーボンリーケージ(排出制限が緩やかな国への産業の流出)対策〔EU排出量取引制度(EU ETS)における排出枠の無償割り当て〕の2030年までの継続を求めた。同年まではCBAMは無償割り当てで補填(ほてん)されていない部分の炭素コストのみを対象とする、無償割り当ての代替措置でなく補完的措置として実施すべきだと提案。そうすることで、EU企業の急激な炭素コスト増を避け、企業の低炭素技術への投資や、CBAMの対象部門のバリューチェーンや貿易への影響も軽減されるとした。また、規則案はEUへの輸入品のみを対象としているが、EUからの輸出品の競争力維持のため何らかの施策をCBAM制度に含めることも提案。具体的な方策は提示しなかったものの、カーボンプライシングの導入など域外国による気候変動対策強化に向けたインセンティブの1つにもなり得るとした。

試験期間を設け、有効性を立証してから本格実施求める

5団体はまた、規則案で示された輸入業者の課金逃れといった不正への対応は不十分だとして、より厳しい対応とガバナンス体制が必要だとした。例えば、(1)EU ETSと同等のカーボンプライシングを実施している国からの輸入品のみ、輸入業者が課金の免除や減額が認められることを保証する、(2)輸入業者の申告内容について、独立した専門家もしくは欧州委の専門チームが毎年検証する、(3)CBAMの実施・監督を担当するEUの専門部署を設立する、(4)1次データに基づく排出量が算出できない場合、輸入業者は2次データを基にした既定値を用いて算出することが認められているが、この既定値は想定される最大値を反映したものとし、輸入元の国・地域にかかわらず全ての輸入業者に対して一律に課すなどを提言した。

最後に、CBAM導入スケジュールを見直すことも求めた。欧州委は2023~2025年は移行期間として排出量などの申告のみを義務付け、2026年から課金を始めて本格的に運用していくとしている。5団体は2023~2025年は欧州委の提案同様、課金は行わず、「データ収集期間」とするが、CBAMの有効性は検証できないとして、2026~2029年を「試験期間」とすべきだとした。試験期間中は対象品目の輸入業者に対して、EU ETSの無償割り当ての対象ではない炭素コストについて課金を始め、同時に欧州委がEU企業にとって公正な競争環境が整ったかどうかを徹底的に評価することを求めた。また、欧州からの輸出品の取り扱いも定めた上で、CBAM導入の目的である「カーボンリーケージ対策」と「域外国による気候変動対策強化に向けたインセンティブ」という点でCBAMが有効で、不正の余地がない施策であることが示されれば、2030年から本格実施、EU ETSの無償割り当てを段階的に廃止するというスケジュールを提案した。

(注)欧州セメント協会(CEMBUREAU)、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)、非鉄金属業界団体EUROMETAUX、ヨーロピアン・アルミニウム、欧州肥料工業会(ファーティライザー・ヨーロッパ)の5団体。

(滝澤祥子)

(EU)

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