米ニューヨーク市が2023年度予算案を発表、歳出は985億ドル、前年度比7.5%減
(米国)
ニューヨーク発
2022年02月22日
米国ニューヨーク(NY)市は2月16日、2023会計年度(2022年7月~2023年6月、注)予算案を発表した。NY市ではビル・デブラシオ市長が任期満了で退任し、1月からエリック・アダムス市長が就任しており、新市長にとって初めての予算編成となる。
歳出総額は前年度比7.5%減の985億ドルとなり(添付資料表参照)、NY州が先日発表した来年度予算(前年度1.6%増、2022年1月24日記事参照)とは対照的に、歳出額を大幅に削減している。アダムス市長は会見で「数十年にわたる非効率と無駄な支出のために、市民、特に最も危機に瀕している人々が必要とし、期待し、支払ってきた代価となる重要なサービスを受けられていない」「財政規律は私の政権の特徴となるだろう」と述べた。
予算案では、ほぼ全ての市部局で3%以上の歳出削減に取り組んだとしている。部門別で最も金額の割合が大きい教育予算は321億ドル(前年度比4.3%減)となっている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で市外への人口流出が進み、入学者数の減少と雇用の削減が予算減の主な要因としている。2番目に割合が大きい健康・福祉予算は、2023会計年度は新型コロナウイルス感染収束が視野に入ることなどから、197億ドル(前年度比16.6%減)と大幅減となった。一方で、予備費には過去最大の61億ドルを計上しており、感染が今後また悪化した際などへの対応を万全にするとしている。また、アダムス市長が選挙戦で重視していた治安対策について、警察関係予算は54億ドルで前年度比3.6%減となっているが、予算説明では、NY市警察の既存リソースを活用して、安全対策のため警官を地下鉄などにこれまでよりも効率的に配置するとしている。また、若年層の失業者が治安を悪化させているとして、若者向けの雇用プログラムを3万人分追加して、10万人にするとしている。その他、7,500万ドルを投じて低所得者向けに市内の地下鉄に半額で乗車できるプログラムを開始することも併せて発表した。
歳入については、景気回復に伴って所得税などが増加していることに加え、住宅価格高騰の影響で固定資産税の増収が見込まれることから、税収総額は659億ドル(前年度比2.9%増)を見込んでいる。一方で、減税措置として低所得者向けの税額控除の拡大や、無料の保育所などを整備・提供する企業に対する投資税額控除なども併せて発表している。
この予算案は市議会の承認・可決が必要になるため、議会での説明・交渉が今後行われ、7月から始まる新会計年度までの成立を目指す。NY市ではパンデミック以降、治安が悪化傾向にあるとされ(2022年2月15日記事参照)、失業率も2021年12月時点で8.8%と全米平均(3.9%)の2倍以上の水準にある。また、警備会社カッスルによると、2月9日時点でNY市のオフィス労働者はまだ3割近くしかオフィスに戻っていないという。パンデミック収束を見据え、NY市に再び活気を取り戻すことができるか、まずは来年度予算編成でアダムス市長の手腕が問われる。
(注)NY市の予算の会計年度は、連邦政府やニューヨーク州政府と異なり、7月から翌年6月。
(宮野慶太)
(米国)
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