ボッシュのモビリティー事業が好調、EV普及が後押し

(ドイツ)

ミュンヘン発

2022年02月22日

ドイツの自動車部品・電動工具メーカーのボッシュは2月9日、2021年の暫定決算を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。総売上高は前年比10%増の788億ユーロで、新型コロナウイルス禍以前の2019年の実績をも上回った。モビリティー事業が全体売り上げの過半を占め、地域別ではアジア太平洋地域が欧州に次ぐ結果となった。主力のモビリティー事業では、蓄電池、半導体、車載ソフトウエアの3つがキーワードとして挙げられる。

電気自動車(EV)シフトに伴い、ボッシュは世界の蓄電池市場は年間25%の成長を見込んでいる。同社は2021年夏、蓄電池製造装置関連で2025年までに年間2億5,000万ユーロの売り上げを目指すと発表(2021年8月20日記事参照)。2022年1月にはフォルクスワーゲン(VW)と蓄電池セル関連の合弁会社設立を検討する覚書を締結し、同年末にも合弁会社が設立される見通しだ(2022年2月3日記事参照)。

また、ボッシュはEV普及を後押しする技術として、炭化ケイ素(SiC)を使用したパワー半導体に注力している。SiCは炭素とシリコンの化合物で、SiCを用いた半導体がEVに搭載されると、通常のシリコンチップと比べてエネルギー消費が少なく済み、長距離走行も可能となる。同社は2021年12月にこのパワー半導体の量産開始を発表。これによってEVの航続距離を最大6%伸ばすことができるとしている。

同社取締役会メンバーのマルクス・ハイン氏は「われわれは車載ソフトウエア市場で2桁の成長を見込んでいる」と言及。2021年末に自社子会社イータスに車載ソフトウエアとクラウド開発を集約したほか(2021年12月14日記事参照)、1月にVWのソフトウエア開発子会社カリアドと、自動運転向けソフトウエア開発に向けた共同開発の契約を締結したことを発表している。ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(2022年2月9日)によると、全世界のボッシュ従業員の10人に1人がソフトウエア担当のエンジニアだという。自動車業界で産業構造の転換が迫られる中、同社は従業員育成にも力を入れており、例えば、これまで内燃機関の燃焼技術に携わってきた熟練エンジニアをソフトウエア担当エンジニアとして再教育。過去5年間の従業員育成のための投資額は10億ユーロ以上で、今後も同程度の投資を予定している。

ボッシュは2030年までに全サプライチェーンの二酸化炭素(CO2)排出量15%削減(2020年比)を目指すともしており、CO2排出量削減を新規調達先の選定基準の1つにすると公表している(2021年8月3日記事参照)。

2022年のボッシュのビジネスの見通しとして、新型コロナウイルス感染拡大による影響と、原材料調達難や輸送コスト上昇などを目下の課題として捉え、これらは特に自動車業界に引き続き影響を及ぼすとの見解を示した。

(大河原楓)

(ドイツ)

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