新首都ヌサンタラに関する法律施行

(インドネシア)

ジャカルタ発

2022年02月28日

インドネシア政府は2月15日、新首都に関する法律2022年第3号を公布・施行した(添付資料参照)。2019年にジョコ・ウィドド大統領が発表した首都移転計画は、2020年にもカリマンタン島で建設開始を予定していたが、新型コロナウイルスの感染状況悪化により法整備が大幅に遅れていた。新首都の名称はヌサンタラ(Nusantara)とされ、総土地面積は25万6,142ヘクタール、中心部は5万6,180ヘクタールとなる。

新首都の開発計画は、5段階に分けられる。第1段階は2022年から2024年まで、以降は2045年まで約5年ごとに段階分けされる。第1段階では、中央政府やオフィス街、住宅地の開発が進められ、公務員や軍隊・警察とその家族の新首都への移動が行われる。新首都周辺の幹線道路の開発は2023年に着工し、2035年に完了する予定だ。

第2段階(2025~2029年)では、経済クラスターの開発が本格的に始まる。工業団地やホテル・エコリゾート施設、インダストリー4.0関連施設や大学などが開発される予定だ。産業開発と経済成長センターとしては、電動二輪車、太陽光発電、エコツーリズム、バイオ燃料、石油化学、鉱業、ウェルネス・ツーリズムなどが挙げられた。

政府は新首都開発に関し、総額最大486兆ルピア(約4兆8,600億円、1ルピア=約0.01円)の予算計画を立てた。このうち、国家予算で19%を負担し、残りは民間企業や国営企業からの投資・資金提供や官民連携(PPP)で補う予定だ(「CNNIndonesia」2月21日)。

大統領肝いりで進む新首都開発、専門家は懐疑的な見方も

ジョコ大統領肝いりの政策である首都移転だが、新型コロナ禍からの経済回復を最優先にすべきとの見方や、開発が環境に与える影響の大きさから、懐疑的な見方も少なくない(「Republika」2月23日)。そのほか、国会開発計画省のボガット・ウィジャトモコ氏は、新首都がチョークポイント(注)であるインドネシア列島航路(ALKI)2に近接していることや、他国の大陸間弾道ミサイル到達圏内に位置すること、人身売買や麻薬密売など国境を越えた犯罪のルートであることを挙げ、新たな戦略的脅威の可能性を高め得ると指摘した(「CNBC Indonesia」2月6日)。シンガポールの南洋工科大学の准教授スルフィカル・アミル氏は、地域間の経済格差を解決するためとの首都移転実施の理由は不十分だとし、「政府が新首都建設に成功した場合でも、大手企業がカリマンタンに工場移転や新たな投資を実施してくれるかは未知数だ」との見解を示した(「CNBC Indonesia」1月31日)。

(注)海洋国家の地政学における概念の1つ。国家がその存続のために、他国によって脅かされてはならないとみる海上の交通路(シーレーン)上の要衝(海峡・運河・港湾)を指す。

(尾崎航)

(インドネシア)

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